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第一章 不可思議な現実?
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『私は貴女よエルネスティーネ』
眩い光がゆっくりと、中心へと集まればそれはやがて人の形へと成していく。
そうして現れたのは私の知る16歳のエルネスティーネだった。
『……っ、お、おのれまた私の邪魔をするのか!!』
先程までの異質なエルネスティーネの地を這う様な恐ろしい怒声に身が竦む。
『お黙りなさい。貴女は私達とは違うのです。さぁ還るべき場所へ帰りなさい』
16歳のエルネスティーネは私を自身の後ろへと隠し私を護る様に前に立つ。
『わ、私のいるべき場所はここだ。私はエルネスティーネ!! そしてあの人は永遠に私のものだ!!』
何を言っているのか意味が分からない。
ただ血を吐く様に叫ぶ声が物凄く辛くて悲しい。
胸が締め付けられ……。
『同情してはダメよ。今ここであの者と共感すれば貴女は元の世界へ永遠に戻れない』
元の世界?
『えぇここは貴女のいる世界ではないわ』
「何故私は自分の世界にいないって、ううん、どうして私の心に思った事がわかるの?」
私は素直に思った通りの事はを告げる。
そんな私にエルネスティーネはほんの少しだけ悲しそうな笑みを浮かべている。
『私は、私達は貴女なの。貴女は私達。これから出会うかもしれないし、もしかしたら永遠に出会わないのかもしれない。でもほんの少しでも覚えていてくれたのであればとても嬉しい。私達は貴女を軸とした世界とほんの少しだけ異なる世界にいるエルネスティーネ』
「異なる世界?」
「そうよ。それは貴女にとって現実でもあり夢なのかもしれない。若しくは全く関係ないのかもしれないわね。でも沢山のエルネスティーネは貴女を愛している』
「わた、しを……?」
『えぇ貴女をね。そしてアレは異質なる者。エルネスティーネではないもの』
指で指し示すのは先程のエルネスティ―……ってあれ?
『真似てはいけない存在に焦がれた余りに化けの皮が剥がれかけてきたのね』
「こ、これは……」
『うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお⁉』
地を這う様な叫びと共にシューシューと蒸気の漏れる音。
勿論蒸気の発するものなんてない……いや、あろう事か蒸気ではないけれども彼女の身体より白い煙の様なものが噴き出していた。
『わ、わたじはぁぁぁぁぁぁぁぁ』
嘘⁉
先程まで私と同じ赤毛交じりの金色の髪の色が変わっている。
ううん、まだ変わる途中なのかもしれない。
また彼女より発せられる煙?蒸気ではっきりとしないけれども色は赤。
然もくすんだ、いえ血が渇いて固まった様な赤黒さも混じっている。
その髪を両手で抑え込み何かの苦しみに耐えている様に見えた。
『さぁ貴女はもう元の世界へお戻りさない』
「元の世界って……」
元の世界へ戻ると言うか、どうしてきたのかさえ分からないのにどうやって?
『私が手助けをするわ。今ならばアレを抑えつつ貴女を無事に元の世界へ戻す事が出来る』
「で、でもそんな事をすれば――――」
エルネスティーネへ危険が及ぶのでは……と二の句を告げかけた。
『心配してくれてありがとう。大丈夫、貴女が無事であれば私達の存在は消える事はないわ』
そんなものなの?
何故そうなのか理由はわからない。
『今はわからなくてもいいし覚えていなくてもいいの。そう貴女はまだ目覚めてはいない』
いや、起きてますけれど。
『そこは敢えてスルーするわ。ただ何時の日か貴女は本当の意味で目覚めるわ。その時に全てを理解するの』
本当の意味の目覚め?
『えぇ全てを理解した時に貴女の選んだ決断に私達は従う』
何か凄い事を言われている感じがする。
でも悲しいかな今の私には何も理解出来ていない。
『焦らなくてもいいの。貴女の時間の中でゆっくり考えればいいわ。さぁもう戻りなさい。お父様やお母様の待つ貴方の世界へ……』
眩い光が私を包む。
ふわふわと仄かな温かさのある光に私の意識はゆっくりと微睡んでいく。
次第に意識だけでなく全身も軽くなり、自分でももう帰るのだと認識した。
消えゆく意識の中でエルネスティーネの少し悲し気な声音が聞こえてきた。
『どうかジーク様をほんの少しだけでもいいから許してあげて。何故なら彼は……』
その先は何を話しているのかはもうわからなかった。
一体16歳のエルネスティーネは何を言おうとしたのかしら。
また彼女は大丈夫だった、のかな。
どう、か無事で……。
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