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第一章 不可思議な現実?
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しおりを挟む黄金に輝く……玉。
あ、なんかその表現は凄く嫌。
でも言葉を縮めるのはもっと嫌。
そんな色の玉が出たのは実に百五十年ぶりだとか。
然も今までの歴史からして金色の玉を引き当てられる時は、この世界を揺るがすだろう何かが起こる予兆の様に選定されたと言う。
また同時にその色に選ばれし聖なる者はまもなく訪れるだろうその災厄へ、しっかりがっつりと対峙しなければならない…・・・らしい。
私自身騎士や冒険者でもなく当然の事ながら勇者でもない。
ましてや癒しや護りの力が今現在進行形である訳でもない。
9歳になったばかりのしがないただの令嬢。
ちょっとお転婆で、時々突飛な行動をして、時々記憶がウロな感じの何処にでもいる――――。
「その様なご令嬢は何処にも存在してはおりません!!」
ここで激しくテアに突っ込まれてしまったわ。
どうやら心で思っていた事を言葉として発していたみたい。
「エル様は常日頃思っている事がお顔だけではなく、ちゃんとお言葉として発せられておられます。なので隠し事は出来ませんわね」
うーん、自分ではそんな心算なんてないのに……。
「まぁそれがエルらしさですものね」
「あぁ私達のエルは永遠に可愛いからね」
何なら生涯嫁に行かなくてもお父様は良いと思うよ……何て真顔で仰るお父様。
多分嘘ではないのだろう。
半分?ううん、ほぼほぼ本気で豪語していると思う。
変わらない何時もの家族の団欒。
今日はアルお兄様も早くにお戻りになられて家族五人でまったりとお茶を……いや違う。
表面的なものは何時もと何ら変わりはない。
ありきたりな会話。
娘、妹ラブなお父様とお兄様。
そんな二人へ若干呆れた様子のお母様とテア。
なのに今何かが違うの。
お父様だけではない。
お母様とアルお兄様の三人の表情が微妙に硬い。
怒っているとかそんな感じではないわ。
ただ困惑、している様にも見えてしまう。
その証拠にテアだって何となくお父様達の異変を察知しているもの。
これは家族だからこそ分かる違和感なの。
金色の玉を引き当てた後私は、私達親子は神官達が止める声も聞かず半ば強引に帰宅した。
最初は何の事かさっぱりわからなかった。
金色の玉を引き当てたと同時に湧き起こる歓声に吃驚したわ。
まぁ確かにその瞬間詰んだ……って思ったわよ。
最初に目の前にいらっしゃる大神官長様と視線が合ったわ。
大神官長様は静かに微笑まれていた。
周りの神官や司祭達の動揺する中、振り返ればお母様が驚愕の表情を浮かべられていた。
その隣でお父様は難しいお顔で私を、その向こうにいらっしゃる大神官長様を見つめられていればよ。
「エルネスティーネ、今直ぐ家へ帰るぞ」
「え、あ、あのお父様っ、でもその金色の――――⁉」
聖なる者に選ばれたのだから説明とか、ほら聖務局に関しての書類とかあるのでは……と二の句を告げようとしたわ。
「その様なものはどうでもいい!!」
「え、きゃ!?」
常の冷静なお父様らしくなく、ひょいっと私を抱き抱えればお母様と共に正面玄関に停めてある馬車へと乗り込み、そのまま猛スピードでタウンハウスへと走り出したわ。
私は馬車に揺られながら何度もお父様とお母様に何があったのか、どうしてそんなに怖いお顔をなさっているのかを問いかけたの。
「エル、舌を噛んでしまうから大人しくしていなさい」
「あぁ大丈夫だ。エルは何も心配しなくとも君には私達家族がついている!!」
何かを確認するかの様に私を強く抱き締めるお父様は何度も背中を撫でていらしたわ。
一体何があると言うのかしら。
もう9歳になったのだから少しは教えて下さってもいいのに。
「僕の愛しの天使は何か考え事でもしているのかな」
そっと私の頬にアルお兄様の手が触れる。
「べ、別に何も。ただ少し……」
いや、思いっきり疑問で一杯なのだけれどね。
だからと言って今は家族に心配を掛けてはいけないと、理由はわからないけれど何となく思ったから……。
「今日のお夕食は何かなって考えていただけですぅ」
ぷくっと頬を膨らませて返事をしたの。
「エルには本当に叶わないね」
私を見たアルお兄様は破顔一笑されるとふわりと私を優しく抱き締める。
「……ごめん心配かけさせてしまったね。でも大丈夫だよエルには僕達がついているからね」
「お兄、さま?」
夕食前になって王宮より知らせが届くとお父様とお母様は直ぐに支度を整え向かわれた。
私とアルお兄様とテアはお留守番。
三人で少し寂しい夕食を済ませ、私は何となく疲れたので少し早めに休む事にした。
目を閉じれば色々な事が瞼の裏に浮かんでは消え、消えては浮かぶ。
意識がぼやけていく中最後に浮かんだのは、悲しい表情をした16歳のエルネスティーネだったわ。
※沢山のエール有難う御座います。
これからも頑張って更新していきますね。
(人''▽`)ありがとう☆
Hinaki
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