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第一章
1 Sideアリエル
しおりを挟むコンコンコンコン
「閣下失礼致します」
軽快なノックの音の後に入ってきたのは宰相補佐のポール。
外見は宰相補佐には絶対に見えない所謂イケメンチャラ男。
これでもイシャーウッド侯爵家の次男。
チャラ男でも仕事が出来るからこそクビにはしていない。
ただ少しでも役に立たなければ何時でもクビにしてやるわ。
「うっわー何その悪辣極まりない表情」
「何が悪辣極まりないよ。本当に貴方って何処までも失礼な男ね」
「ほらほらまたオネエ言葉になっていますよ。えーっとお仕事モードの時にはオネエ厳禁って陛下から言われてませんでしたっけ」
「――――っ、煩いお黙り!!」
思わず持っていた書類の束をポールへと投げ付けてしまった。
「イタタ、もう酷いですよ。暴力反対、職場環境はクリーンで行きましょう」
そう言いながら床に散らばった書類を拾っている。
相も変わらずふざけたお調子者よね。
でも何処か憎めないのもクビにしない理由の一つ。
アタシが書類を拾うポールの姿を何となく見つめていればよ。
急に何を思ったのかポールは真っ青になると拾っていた書類を放り出し両腕で自身の身体を抱き締め、これ見よがしにガクガクと震え出す。
「ちょっと、何そんなに震え……」
「嫌ですよ僕をぱくんと食べないで下さいね!!」
「だ、誰がお前等喰うかああああああああああ!!」
全く信じられない。
幾ら何でもアタシにも好みと言うものがある。
またアタシの顔と身体は残念ながら好みではない。
ふふ、アタシの好みはこーんな血の通ってない冷たい感じの自分の顔ではなくて、そう何と言うかほんわかと温かい優しい包容力のあるぽちゃっとした、ただし筋肉は絶対。
筋肉こそ正義よ!!
昔絵姿で見た東洋の力士!!
あの細い布で男の大事なモノをしっかりと覆い隠す慎ましやかな所が好いわね。
そうアタシこそはこのレアード帝国初のオネエ宰相であると同時にエインズワース公爵ウィルフレッド・アリエル・シェリンガム。
確かに仕事柄姿形は紛れもなく男性にしか見えない。
然も自分で言うのもあれだけどかなりのものよ。
でもあたしにしてみればそんなものはどうでもいい。
だから自分の事を理解した時よりアタシは早々に家族だけでなく公にもカミングアウトをしたわ。
全ては同性にしか思えない令嬢やご婦人方から身を護る為。
それなのに私の性的嗜好さえも飛び越え……いや無視して未だに多くの釣書が送り込まれている。
これには流石のアタシも引いているわ。
アタシは男が好きなの。
とは言え外見は男、でもその心はしっかり乙女!!
そんなアタシが女性を愛せる筈がない。
先ずアタシの息子ちゃんも女性相手には1㍉も勃って何てくれないわ。
娘ちゃんでないのが偲ばれるけれど……。
そんなアタシの内心を察したのかしら。
何故か冷めた視線でポールはボソッと呟いた。
「……ですよね~」
本っ当に可愛くない子!!
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