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第五章 拗らせとすれ違いの先は……
【11】
しおりを挟む「……さ、ま?」
金も人も使えるだけ使って漸く貴女を見つけ出した時には既に危篤状態だった。
「ヴィ、ヴィヴィアン・ロー……ズ?」
久しぶりに見た姿に愕然としてしまった。
ふっくらとマシュマロの様な貴女はもう何処にもいない。
今俺の腕の中にいるのはげっそりと痩せこけ、骨と皮と化してしまった貴女だった。
呼吸をするのも最早億劫と言った具合にでも貴女は私の姿を見た瞬間、それでも必死になって笑おうとしてくれたのが最期だった。
俺は貴女を『もう少しだけ待っていて』と言い残すと同時に娼館にいただろう汚れた、愛しい貴女を穢した男達の局部を切り取ると共にその安い命すらも全て奪い取ってしまった。
娼館内は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
下卑た慾塗れの男共の流した血によって……。
そうして俺はそのまま宮殿へ、いや公爵家へ、アイツだけはっ、リーヴァイだけは絶対に許せないと俺は馬に乗って踏み込もうとしたのだ!!
「父上落ち着いて下さい!! この様な事をしてもローズは、ヴィーは決して喜びはしません。妹は誰よりも優しい女性でしたからね」
「パ……シー?」
荒ぶる俺の行動を諫めてくれたのはこの人生での俺の息子であり愛する貴女の兄だった。
「私だとて本当に辛いし悔しいです!! 愛する妹がこの様な目に遭っただけでも到底許されないし許せません。復讐は簡単に出来ますが父上、ヴィーは決して復讐を望む娘ではありません。誰よりも優しく聡明な私の自慢の妹なのです。ですからどうか父上もヴィヴィアン・ローズの為に、どうか一刻も早くあの娘を我が家へ連れて帰りましょう。きっとヴィーもそれを望んでいると、思い……ます!!」
何時もは冷静沈着な、余り感情を表に出さない息子のパーシヴァルは貴女の、俄かには信じ難い哀れな姿を見た瞬間、彼は滂沱の涙で以って俺を諫めそして貴女の死を心より悲しんでいた。
「……ああそうだな。ヴィヴィアン・ローズを我が家へ連れて帰ろう」
息子に諭されれば最早従うしかない。
いや何よりもこれ以上貴女をこの様な場所へ置いておきたくはなかったのだ。
貴女と共にここへ放り込まれた侍女は既に亡くなっていた。
遺体も適当に、何処に葬られたのかも今となってはわからない。
彼女自身子爵家の令嬢なのにこの様な末路が待っているとは……。
こうして家族で貴女の好きだったミルワード領にある景色の良い、花が咲き乱れる美しい丘へと貴女を埋葬した。
もう二度とこの様な悲しい人生を送りたくはない!!
いや、この悲しみの連鎖より何としても貴女を救い出したい!!
もし、そうもし今度があるのであれば……いや今度こそだ、今度こそ何があろうとも決して貴女を何物からも守ってみせる!!
俺の全てを、そう使えるモノ全てを用いて貴女を全力で守ってみせるから、だから安心して生まれてきて……。
五度目の人生を終えて六度目。
俺は6歳になって少し経った頃だった。
愛する貴女と再び出逢えのだよ。
まさか今度はあれ程憎くて殺してやりたいと思っていたリーヴァイとして……。
いやはや人生とはまこと奇なりとはよく言ったものだな。
でもリーヴァイとして転生した以上流石にあの末路はないと断言出来るよ。
そして覚えておいてね。
今度は目も眩む様な幸せに、あぁやっと貴女をこの手で幸せにする事が出来る!!
思いのつく限り貴女をドロドロに甘やかせるだけ甘やかし、俺なしでは絶対に生きていけないくらいにしてみせるよ。それ程、うんそのくらい俺の愛は重くて大きい。だからこれからを楽しみにしていてね、僕の愛するヴィヴィアン・ローズ。
決してもう逃がしてあげないからね。
俺は腕の中にいるヴィーの甘い、甘過ぎる唇へ自身のそれをゆっくりと重ねた。
「愛しているよ、僕の唯一」
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