92 / 120
第四章 逃げ妻は自由を満喫し妻に逃げられた魔王はじわじわと追い詰める
【15】
しおりを挟む♡ ◇ ♡
毎日がとても楽しく、そして穏やかで幸せな日々です。
22歳の時に過去の記憶を全て思い出した瞬間より何度も運命へ抗うべく、本当に私は色々と努力を致しましたのよ。
なのに全て悉く失敗の連続。
落ち込むなと心の中で思いつつもやはり誰しもバッドエンドな未来は嫌でしょ。
それにバッドエンドな未来は私一人だけではないのです。
そう私の可愛いシンディー、此度こそ私は貴女を守りたい!!
「ヴィヴィアン様っ、お早くお逃げ下さいませっ。ここは私が何としても食い止めて見せます!!」
そう言ってシンディーは何処に隠し持っていたのでしょう。
手に剣を構えれば何時もの様に私を何としても守るべく自身の身を犠牲にしたのです。
「駄目ですシンディー!! 貴女を犠牲にして何故わたくしがのうのうと生き永らえなければいけないのです!! 向こうの目的はわたくしだけ、わたくしさえ大人しくあちらへ行けば問題はないのです。ですからシンディーどうか、どうか此度こそは幸せをっ、貴女だけでもお願いだから無事に生き延びなさいっ!!」
そう此度こそ、えぇ何度も可愛いわたくしのシンディーを殺されて堪るものですかっ!!
わたくしはシンディーを優しく抱き締めれば直ぐ彼女を奥の支度部屋へと隠そうとしたのに――――⁉
「へへ、これはこれは上等な女が二人もいるぜ。旦那ぁ旦那の仰っていたのは女が一人って事でしたけどよぉ、この際一人も二人も同じでしょ」
薄汚い、下卑た厭らしい視線と薄ら嗤いを浮かべながら四人の男達が公爵家のっ、然も信じ難い事に公爵夫人の私室へと土足で入り込んできたのです。
これは断じて許される事ではありません。
おまけに男達は厭らしい視線でわたくしだけでなく、わたくしよりも若く美しいシンディーを舐め上げる様に見つめているのです。
「か、彼女は関係な――――」
わたくしは恐怖で震え上がる心を必死に抑えつつそれでも何とかこの場よりシンディーを逃がす事だけを考え、必死に心を落ち着かせながら、でも震える声のまま何とかこの場を制しようとしたのにです。
旦那様の目的はわたくし一人だけの筈。
シンディーは運悪く巻き込まれただけ……っ⁉
「……好きにしろ。だが一刻も早くこの場より去るがいい。ここはお前達の様な者がいてはならぬ場所だ」
心が凍り付いた瞬間です。
一片の感情なんて可愛らしいもの等この方と夫婦となって一度たりともなかった。
会話は何時も最低限度。
然も視線すらわたくしの存在が余程疎ましいのでしょうか。
殆ど合わせた事もなく旦那様との関係も真っ白白な清いものでしたわ。
えぇ別にそれは大した問題ではありませんわ。
わたくし達は貴族ですもの。
恋愛小説の様な恋し愛し愛されての婚姻なんてものはそれこそ夢物語に過ぎません。
貴族の婚姻とは一種の契約。
そこに感情は一切なく、世継ぎとなる子を儲けきちんと養育すればよい事も十分理解しております。
ですがわたくしと旦那様とは12歳と言う年齢差。
然もわたくしの方が年上なのです。
おまけに35歳にもなって23歳の旦那様との婚姻なんて、務めの一つでもある世継ぎさえ産む可能性のない女に最初から関心なんて持てよう筈もありません。
そうですわね。
本当にこの婚姻で辛い立場なのは旦那様の方なのでしょう。
陛下の勅命とは言え、貴族派閥の均衡の為だけの婚姻等受け入れたくもなかったのでしょう。ですから外に愛人、いえ恋人を数多作られたとしてもまた対象の女性達との間に子を生されたとしても仕方のない問題なのです。形だけの正妻のわたくしには何も言う権利等最初からないのですから……。
それ故に疎まれているだろう事は理解しておりました。
何時かは離縁……それさえも何も言わず受け入れる心算でした。
離縁されれば実家であるミルワード侯爵領内にある修道院へ身を寄せ、静かに余生を送ろうと何時かの日の為に少しずつ準備をしてきたと言うのにです。
26
お気に入りに追加
3,410
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる