【改稿版】旦那様、どうやら御子がおデキになられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉ 

Hinaki

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第四章  逃げ妻は自由を満喫し妻に逃げられた魔王はじわじわと追い詰める

【15】

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 ♡ ◇ ♡


 毎日がとても楽しく、そして穏やかで幸せな日々です。
 22歳の時に過去の記憶を全て思い出した瞬間より何度も運命へ抗うべく、本当に私は色々と努力を致しましたのよ。

 なのに全てことごとく失敗の連続。

 落ち込むなと心の中で思いつつもやはり誰しもバッドエンドな未来は嫌でしょ。
 それにバッドエンドな未来は私一人だけではないのです。

 そう私の可愛いシンディー、此度こそ私は貴女を守りたい!!



「ヴィヴィアン様っ、お早くお逃げ下さいませっ。ここは私が何としても食い止めて見せます!!」

 そう言ってシンディーは何処に隠し持っていたのでしょう。
 手に剣を構えれば何時もの様に私を何としても守るべく自身の身を犠牲にしたのです。

「駄目ですシンディー!! 貴女を犠牲にして何故わたくしがのうのうと生き永らえなければいけないのです!! 向こうの目的はわたくしだけ、わたくしさえ大人しくあちらへ行けば問題はないのです。ですからシンディーどうか、どうか此度こそは幸せをっ、貴女だけでもお願いだから無事に生き延びなさいっ!!」


 そう此度こそ、えぇ何度も可愛いわたくしのシンディーを殺されて堪るものですかっ!!

 わたくしはシンディーを優しく抱き締めれば直ぐ彼女を奥の支度部屋へと隠そうとしたのに――――⁉


「へへ、これはこれは上等な女が二人もいるぜ。旦那ぁ旦那の仰っていたのは女が一人って事でしたけどよぉ、この際一人も二人も同じでしょ」

 薄汚い、下卑た厭らしい視線と薄ら嗤いを浮かべながら四人の男達が公爵家のっ、然も信じ難い事に公爵夫人の私室へと土足で入り込んできたのです。

 これは断じて許される事ではありません。

 おまけに男達は厭らしい視線でわたくしだけでなく、わたくしよりも若く美しいシンディーを舐め上げる様に見つめているのです。

「か、彼女は関係な――――」

 わたくしは恐怖で震え上がる心を必死に抑えつつそれでも何とかこの場よりシンディーを逃がす事だけを考え、必死に心を落ち着かせながら、でも震える声のまま何とかこの場を制しようとしたのにです。

 旦那様の目的はわたくし一人だけの筈。
 シンディーは運悪く巻き込まれただけ……っ⁉

「……好きにしろ。だが一刻も早くこの場より去るがいい。ここはお前達の様な者がいてはならぬ場所だ」

 心が凍り付いた瞬間です。
 一片の感情なんて可愛らしいもの等この方と夫婦となって一度たりともなかった。
 
 会話は何時も最低限度。
 然も視線すらわたくしの存在が余程疎ましいのでしょうか。
 殆ど合わせた事もなく旦那様との関係も真っ白白な清いものでしたわ。

 えぇ別にそれは大した問題ではありませんわ。

 わたくし達は貴族ですもの。

 恋愛小説の様な恋し愛し愛されての婚姻なんてものはそれこそ夢物語に過ぎません。

 貴族の婚姻とは一種の契約。
 そこに感情は一切なく、世継ぎとなる子を儲けきちんと養育すればよい事も十分理解しております。

 ですがわたくしと旦那様とは12歳と言う年齢差。
 然もわたくしの方が年上なのです。
 おまけに35歳にもなって23歳の旦那様との婚姻なんて、務めの一つでもある世継ぎさえ産む可能性のない女に最初から関心なんて持てよう筈もありません。
 
 そうですわね。
 本当にこの婚姻で辛い立場なのは旦那様の方なのでしょう。
 陛下の勅命とは言え、貴族派閥の均衡の為だけの婚姻等受け入れたくもなかったのでしょう。ですから外に愛人、いえ恋人を数多作られたとしてもまた対象の女性達との間に子を生されたとしても仕方のない問題なのです。形だけの正妻のわたくしには何も言う権利等最初からないのですから……。


 それ故に疎まれているだろう事は理解しておりました。
 何時かは離縁……それさえも何も言わず受け入れる心算でした。
 離縁されれば実家であるミルワード侯爵領内にある修道院へ身を寄せ、静かに余生を送ろうと何時かの日の為に少しずつ準備をしてきたと言うのにです。
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