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第四章  逃げ妻は自由を満喫し妻に逃げられた魔王はじわじわと追い詰める

【6】

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「おおっ、こりゃあすげえなっ」
「本当だねぇ。目の前で世界でも断トツ一位の害魔獣で、聖女の作る結界の中ですらものうのうと自由に生きていられると言うある意味世界最大級の魔獣コックローチGがさ。こんなにもあっさりと捕まっちまうなんて……え……う、嘘ぉっ⁉」

 ジークとフィンがそれぞれ感嘆の言葉を述べている間にもコックローチG……通称Gは、一匹、二匹とホイホイの中へ吸い寄せられる様に入ってはネバネバな床に手足を取られ必死に足掻いている。

「だけどなんでこんなにもホイホイの中へ簡単に吸い寄せられるんだ?」

 ぼそりと呟くのはフィン。

「何かへ吸い寄せられるってあの網状の袋に何か入って……ってもしかしなくってもか?」

「え? あ、ああ、そうだね。アレであらば容易に説明がつくわ」

 お互いにジークとフィンはあるモノを連想すると双方共に納得する。

「でもアレだとすれば幾ら何でも採取するのはとてもじゃあないがとんでもなく困難だろう」
「そうだよねぇ。何と言ってもアレはナヴァールの樹海でしか採取出来ないしまた他所の地では育ちやしない。それにナヴァールの樹海へ入れる者はSSS級。まあSS級レベルでも入れるっちゃあ入れるんだけれども……ね」


 ――――但しどちらにせよ命の保証は出来ない。



 ナヴァールの樹海……それは西にあるラモアン大陸の丁度真ん中に存在する広大な樹海。
 大陸の東北部一帯を支配する朔耶さくや国と南西部一帯を支配するジラルデ王国という大国間の勢力を分断する様な形でそれは形成されている。
 滅多に人が立ち入らない危険な樹海には様々な動植物は勿論、魔獣だけではなく魔に属する不思議な植物達が自由に生息しているらしい。

 まあと言う表現は単にこの樹海を制覇した者がいないと言う証でもある。

 何にせよ魔獣の生態は勿論そこに人間が住んで……いや恐らくは住む事は出来ない。場所によれば魔が好む濃厚な瘴気があちらこちらで勢いよく噴出する場所があると昔より伝え聞いているのだ。

 また何れの国もナヴァールの樹海より100㎞圏内には人間の住む集落は存在しない。
 現在両国で問題となっているのは、樹海は年々極僅かであるのだが確実にその領土を広げている。
 その証拠にどちらの国も百年前にあっただろう村は今樹海の中へと沈んでしまった。
 それは自然の摂理なのかはたまた魔獣や瘴気によるものなのかもわからない。
 ジークとフィンの二人が思うモノが危険極まりない場所の何処かでひっそりと咲いて、いや生息しているのが……。


 魔性植物ゾーエ。
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