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第四章  逃げ妻は自由を満喫し妻に逃げられた魔王はじわじわと追い詰める

【5】

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「「おおこれは凄い!!」」

 フィンとジークのやり取りが漸く落ち着いた頃、シアは鞄よりローズの作った魔道具を丁寧に取り出していく。

 勿論場所は商業用の受付カウンターで、当然担当はフィンである。
 ただそのフィンの背後に煩い視線……ジークが張り付いているのは言うまでもない。

「こ、これは何て言うもんなんだっ⁉」
「お、落ち着きなさ……い、いや、あんたの気持ちはアタシにもビシバシ伝わってくるよっ!!」

「…………」
  
 鞄の中より取り出されたのは縦15㎝×横20㎝の少し硬めの紙に細かな網状で作られている小さな袋が一つ。一見して誰もが何の用途で作られているのかは皆目見当がつかないだろう。それがフェンとジーク、いやいや最初はシアでさえも頭の中で? マークが咲き乱れていたのは内緒である。

 ただ訳も分からず興奮しまくりの二人へシアは訳知り顔で……と言うか、この時点で理解していなければギルドを通じての販売は出来ない。

 最初こそはシア自身も驚きの連続だったのだがここへ来る頃にはぶっちゃけ少しは慣れた……と言ってもいい。
 何故ならこの魔道具のお陰でシアの狩りは俄然がぜん楽になったのだから……。


「えーっとコホン、この魔道具の名は魔獣ホイホイと命名されております」

「「はあっ、ってなんだそれっ⁉」」

 何とも脱力系なネーミングである。

 シアも最初聞かされた歳そう思ったのだが、敬愛するローズの前では絶対におくびと言うか表情かおにだって一切出しはしない。

 笑顔を湛える……一択なのがシアである。

 それにローズが作り出したモノは譬えどの様なものであれ最上級の作品である事は間違いない!!

 現に今目の前にあるこの魔獣ホイホイは実にとんでもなく優れた商品なのだ。
 そうしてネーミングを発表すると共にシアは二人の前で静かに淡々と、ホイホイなるモノを慣れた手つきで作成していく。

 先ず床面のシートを剥がせばお家となる残りの部分を折り目に沿って組み立てていく。
 最後に天井部分を差し込む前に網状で作られた袋を床面の真ん中へ置く事を忘れてはいけない。
 こんな感じで1分も掛からず簡単に作成された小さな小屋と呼ぶにはとてもではないが脆弱過ぎる入れ物に、ジークは間髪入れず突っ込んだ。

「これって風除けにもならないって言うかさ。こんな小さなもんって言うか紙切れがどうして魔獣ホイホイって言うだよ。抑々そもそもこんなに小さければ魔獣なんか、そう、魔、獣な……んかっておいっ⁉」


 かさ、カサカサ……べちゃ。


 流石にこれはないだろうとジークが吠えかけたと同時に魔獣と呼ぶには些か極小過ぎるけれどもである。

 これが意外に繁殖能力が半端なく強くそして何よりその個体数が多い事。

 また魔獣にしては何処にでもそう人間達の住む町や村、いやいや魔獣達の脅威とも言える聖女達の作り出す聖なる結界の中ですらその身体が極小過ぎる故に生息可能であり、実に世界的且つ超絶厄介な害魔獣断トツ一位のその名もG!!

 そう今まさに三人の前でコックローチGが魔獣ホイホイの中で、粘着性のある床へ自ら捕らわれてしまったのだ!!
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