59 / 120
第三章 それぞれの闇と求める希望の光
【8】
しおりを挟む最初は当然の結果で、それが当たり前のものだと俺は普通に信じていた。
誰しも己が努力をして勝ち得た幸運なのだと、またそれを疑う者はいなかった。
初めて気が付いたのはヴィーと出逢って四年と言う時間が既に経過した頃の事だ。
当時の俺は10歳の相変わらずのお子様で、ヴィーは22歳の結婚適齢期が微妙な妙齢の女性。
ふんわりとした雰囲気は変わらず周囲の者を何時も幸せにさせる魅力的な笑顔は未だ健在いや、そこへ益々女性らしさに磨きがかかると共に、余りの美しさに俺はヴィーへ逢う度に煩く打ち鳴らす心臓をいっそ一思いに突き刺してしまおうかと何度考えた事だろう。
この四年もの間ヴィーへ逢う度に俺は一体の何の修行なのかと真剣に悩む度、自身の慾と初めて知る身体の変調そしてそれだけは絶対に彼女へ知られてはいけないと、不毛な努力を何度も繰り返すピエロそのものだった。
その理由は悲しいかな決して縮まる事のない愛する女性との年齢差は十二年。
俺自身は特段問題視する事案でもないし、はっきり言って許容範囲だと大声で叫びたい!!
でもヴィーはとても繊細な女性なのだ。
客観的に見て……まあはっきり言って現実を直視はしたくないけれどもだ。
何処の世界に12歳も年下の、何の力……いやいや権力的にはそこらの貴族よりもしっかりと行使は出来る!!
とは言え高が10歳の子供に惚れられる22歳の令嬢と言う構図は倫理面から言って到底受け入れ難いと思うのは、流石の俺でも十分過ぎるくらいに理解はしていた。
仮に反対の立場……そう女性が幼く男性が年上ならば受け入れられるというこの世界の方が可笑しいのだと、俺は心の中で盛大に突っ込みを入れていた。
だがその反対論を受け入れている方が現実なのである。
数年後お互いが成人していれば噂程度にはなるけれども特に問題視はされない?
いや、きっと社交界にいる煩い蠅達は皆挙って小さな問題を然も途轍もなく大きな問題だと言わんばかりに煩く囃し立てるのだろう。大きな尾ひれを何本も付けてな!!
そして間違いなくその標的になるだろう相手は俺の場合――――ヴィーだ。
これまでにヴィーの祝福と言う恩恵を余す事なく受け入れている癖に連中は彼女を平気で貶める言葉を、まるで呼吸をするかの様に吐き続けるだろう。
それもこれも俺がただの貴族子息ではなく、皇族であり現時点で皇位継承第三位と言う身分の高さが裏目に出ていると言ってもいい。
しかしそれもこれもひっくるめてそれでも俺にはヴィーが必要なのだ!!
何者にも決して渡したくはない。
俺だけの、俺の唯一なる存在なのだ!!
ただヴィーが俺自身をどう想っていてくれているのかは、残念ながらまだ確かめられてはいない。
多分嫌われてはいない。
でもだからと言って10歳の子供を恋愛対象に見てはいないと言う事実は嫌でもわかる。
本当は少しもわかりたくないのだがな。
だから俺は四年前より色々と頑張っているのだ。
何時の日かヴィーの隣へ立つ事の出来る男になりたいと、ただそれだけの為に必死になって勉強をしていた頃だった。
ヴィーがあからさまに俺を避ける様になったのは……。
同時にヴィーの秘密を知った瞬間でもあったのだった。
44
お気に入りに追加
3,410
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる