42 / 117
第二章 五日後に何かが起こる?
【17】
しおりを挟むう、嘘ぉっ!?
あ、あり得ない!!
えぇっ、絶対にあり得ないですわっ!!
何故ここにっ、どうしてっ、何でシンディーと旦那様がいるの⁉
そして同時にハモらないで〰〰〰〰!!
私室から寝室へ繋ぐ扉にはシンディー。
旦那様の私室より夫婦の寝室への扉には旦那様。
何故かどちらもとても恐ろしい表情をなさっていますっ。
私の逃亡計画は失敗――――いいえっ、ここで挫ければこれまでの努力は全て海の藻屑と化してしまいます。
そうすれば私はまた……後何度、いいえ全てを今回で何としても終わらせる為に私は!!
私は数m先にいるだろうシンディーの腕を強引に引っ掴めば問答無用で彼女をゴム製の扉の向こう側へ、そうして旦那様が魔導力を行使する前に自身の身をその扉へ投じればです。
力任せと強引に潜った故に肘や足を強かに打ち付けたにも拘らず、優雅な所作も何もかも全ては高い棚の上へと放り投げ、ゴム製の扉を素早くバックの中へと片しましたわ!!
こ、これで証拠隠滅……もう簡単に追ってはこられない。
「と、兎に角せ、成功なのかしら」
突然の事だったので咄嗟に全ての体力を使い切った故なのでしょうね。
両肩ではぁはぁと荒い呼吸をしておりますが、と、兎に角少し落ち着かなければ……。
あぁでもですわ。
出発とはもっと厳かで感慨深いものだと思っていたのですが、いざ行ってみると実に呆気ないものでしたわね。
「お、奥方様……?」
そこへ状況を今一飲み込めてはいないシンディーが、何とも複雑な表情で私を見つめています。
大丈夫ですよ。
貴女の事はこれからちゃんとジプソン子爵家へ連れていきますからね。
えぇこれで本当に良かったのです。きっとこれから多くの方々にご迷惑をお掛けするからと思い、それぞれ思う方々へお手紙を認めた際に万が一と思ってシンディーの実家の分も認めておいて助かりました。
これで彼女が実家へ戻ったとしてもご家族への説明がきちんと出来ると言うものです。
何と申しましてもこれから未来ある優しい娘なのですもの。
「さぁ貴女をジプソン領まで送っていきますよ」
「嫌です」
あらまぁどうした事でしょう。
折角今度こそ幸せになれると言うのに困ったものですね。
「お、奥方様は私を家へ送ったその後は如何なされるのでしょう」
公爵家へは戻られませんよ……ね。
こ、凄く怖いですよシンディーっ。
お願いですからその様に怖い表情をしないで下さい。
「ならば私を奥方様の向かわれる場所へお連れ下さいませ。私は奥方様のご存じの通り貴女様の護衛も兼ねております」
「で、でも、それは公爵家との契約で……」
シンディーの雇用主は旦那様。
彼女を受け入れれば間違いなくこの場所をそう公爵家へ知らされれば、それこそ元も子もないのです。
「私の主は旦那様ではなく奥方様だけに御座います!! それに外の世界を知らずに生きて来られた奥方様がこれより先お一人で無事に生きていけるとは到底思えません。私はこう見えましてもこれからの暮らしに何かと役立てられると思います」
それはもう清々しい程に、宮殿にいる騎士達にも引けを取らないくらい眩しくも凛々しいと思ってしまいました。
だからその余りのカッコよさに思わず私は――――。
「よ、宜しくお願い致します」
あっさりと陥落してしまいましたの。
「では奥方……」
「もう奥方ではないわ」
「ではヴィヴィ……」
「その名も捨てました。これからはローズと、ただのローズと呼んで下さい」
私はにっこりと微笑みながら新しい名を告げました。
「では……ろ、ローズさ、参りましょいえローズ参りましょうか」
「はい、行きましょうシンディー」
若干シンディーの耳が朱に染まっておりましたが、そんな所も含めて可愛らしいのがシンディーなのです。
こうして私達は再び扉を潜り新たな天地へと向かって出発したのです。
27
お気に入りに追加
3,387
あなたにおすすめの小説
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる