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第二章 五日後に何かが起こる?
【2】
しおりを挟むいや寧ろそうでなくては可笑しいとさえ思ってもいたのだ。
何故ならそれが許されるだけの身分と権力に財力だけはでなく、彼女の夫はそれに加え若いくその容姿はとても美しい。おまけに知をも備えたる魅力溢れる男性なのである。
ましてヴィヴィアン達は貴族。
貴族にとっての婚姻とはあくまでも家と家を繋ぐ契約が重視されるものであり、そこに愛情が付随される様な事はほぼないと言っても過言ではない。
現実に社交界では夫婦双方に恋人や愛人を多数囲っている者は決して少なくはない。
政略による伴侶に求められない真実の愛、はたまたその場限りの泡沫の恋に貴族達は心を馳せ人生を謳歌しているのだ。
だからヴィヴィアンの夫であるリーヴァイもそれらと何ら変わりがないのだと、それに加え一回りも年上の妻なのだからそこはしっかり弁えなければと彼女は自身を戒める。
また然して美しくもなく、その上ぽっちゃり体型であるのもヴィヴィアン自身自覚をしていた。当然若い頃よりほっそりとした体型になりたいと、数えきれないくらいにダイエットを試してきた。だが結果は何れも惨敗。ヴィヴィアンの体型は昔と少しも変わる事はなかった。
痩せていれば、夫よりも年下だったのであれば、こんな風な悩みを抱かなくとも良かったのかしら。
若い愛人へ嫉妬をするなんて、辛くて悔しく悲しい想いをしなかったのかし……ら。
いや違う。
たとえ若く見目が良かろうともだ。これまでの経緯を思い出せば姿形が変わろうともヴィヴィアンそしてシンディーの運命が変わろう筈はないのだ。
何度も辛酸を舐めてきた。今度こそは呪われた様な過去、そして現在を変えなくてはいけない!!
今の歩みを決して止まってはいけない。こうなる事は最初からヴィヴィアンはわかっていたのだから……。
気持ちを切り替えようとするも実際公爵家へ嫁しての五年間もの夫婦生活は、ヴィヴィアンの予想以上に余りにも幸せに満ち足りていた。
確かに多忙を極める夫との触れ合える時間は少なかったけれどもだ。
それを妻である彼女に不安を一切感じさせないくらいに幸せだったのである。
幸せ過ぎた故にヴィヴィアンは予想された未来をうっかりと失念してしまっていたのだ。
「本当だったらもっと早く行動を起こす筈だったのに……ね」
「え、奥方様今何か仰いましたか?」
「いいえ、何でもないわ」
ヴィヴィアンは咄嗟に微笑みその場を何とか誤魔化す。
「そう言えば奥方様、今日はお食事の後ダレン様とウィルクス夫人の両名が来月のお茶会についてお話があるとの事ですわ」
「あ、そ、そうでしたわ。来月のお茶会ね。あ、そ、そうね。その事についてもわたくしから二人にお話があったのです」
先程の心の呟きがナタリー達に上手く誤魔化せる事が出来て良かったと、ヴィヴィアンはほっと一息吐くと共に立ち上がればゆっくり食堂へと向かった。
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