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第一章 突然の訪問者
【22】
しおりを挟む「ふん、嫁して五年もの間子供の一人さえも孕めない年増の石女何て用なしなのよ。これからは愛するリーヴァイ様の為だけに沢山子供を、そうこの私が生んで差し上げるの。だからきっとこの子もリーヴァイ様は気に入って下さるのよ。ああそしてあの石女とあなたの処遇はね、リーヴァイ様がお戻りになられる間のあなたの態度で決めさせてもらうわ」
「な、何だと!!」
この馬鹿女は一体何を……と、シンディーは訝しげにサブリーナを睨みつける。
しかし現在進行形で自身の世界へどっぷりと浸かり切っているサブリーナは一向に何も気に留める様子はない。
「くすくす、今の態度だとワイン樽女は間違いなく場末の汚らわしい娼館行き――――かしら?」
「こ、殺す!! 今直ぐぶった切ってやる!!」
「「だ、駄目ですってシンディーさんっっ。い、今は……悔しいのはわかりますけれども今だけはどうか気を静めてください!!」」
ジェーンとメアリーはシンディーへ抱き着く格好で何とか抑え込んではいるものの、彼女達とてシンディー同様言葉に言い表せられないくらいに悔しくまた腹立たしいのである。
自分達の敬愛する女主人をここまで貶められていると言うのに、目の前の女の胎にいるらしい公爵の子供と言う曖昧で未確認な存在を前にし、彼女達を含め今公爵家では誰もサブリーナに対し何も出来ないのが現状だった。
本来であればサブリーナを決して邸内へ入れず、そのまま誰にも気づかれずに闇へと葬る事も可能だった筈。
だがサブリーナの存在を屋敷内にいる全ての者にとって一番知られたくなかったヴィヴィアンに知られてしまい、あろう事か人を疑う事の知らない彼女は賓客待遇としてサブリーナを邸内へ招き入れてしまったのである。
そうして一度邸内へと入ればサブリーナは生来の図々しさと自身の欲望を一切隠そうとしないどころか、こうして公然と公爵夫人であるヴィヴィアンを貶めている。
誰もがその態度に対し許せないし許そうとも思わないけれどもだ。今のサブリーナへ直接手が下せないのもまた事実。
全ては公爵であるリーヴァイが戻ってくるまで耐えるしかない。
そして誰もがリーヴァイの言葉によりサブリーナの虚言であると、そう断言して欲しいと願っている。
だがもし……万が、億が一にもサブリーナと真実その様な関係にあったのであれば……。
何としてもっ、譬えたった一人になろうとも絶対にヴィヴィアン様を命懸けてお守りする!!
敬愛する姫へ永遠の忠誠を誓う騎士の如くシンディーは、ヴィヴィアンを守る為だけに心を封印し、サブリーナへ上っ面だけ従う意思を見せた。
その後ダレンより齎された知らせによれば、当主リーヴァイは五日後に屋敷へ戻って来るとの事であった。
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