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第一章 突然の訪問者
【9】
しおりを挟む「きゃっ、や、止め……!?」
「煩い黙れっ、この俺様が直々に見てやると言っているんだ!! いいからさっさと足を拓けよ!!」
「あははっ、やだぁこの子ってば泣いちゃっているじゃない。ふーん、もしかしてさ、そ~んなにぃ、カートにあそこを見られるのがもしかしてぇ、本当は嬉しいんじゃあないのかしら」
「ち、違、違いましゅ!!」
「やあだこの子ってこういう時にそんなあざとい言い方するなんて!! 態々嫌がっている振りまでしてさ。まだ私とおんなじ7歳の癖に恐れ多くも伯爵家と縁づく事まで考えちゃっているのかなぁ? 同じ女の子だけれど私はちょっと好きになれないかなぁ。ほらカートもさ、折角色目を使ってくれる子なんだから、もう遠慮しなくってもいいって。それにここには煩い大人は来ないしぃ、私がこのお茶会の女王様なんだもの。ね、だから早く女王様の言う事を聞いてよぉ」
「う、うん。そ、それもそうだな。ははっ、サブリーナ女王様の仰せのままに。さぁ仲良く始めようぜ。俺は以前からお前――――⁉」
ブンっっ
ドカッッ
ぐにゅんっっ
ガラガラガッシャ――――んん!?
もう散々胸糞の悪い会話をだらだらと聞かされてきたのです。
気付けば私は馬鹿共の囲みを問答無用で突破すれば、勿論そこは突破するまでにお馬鹿な子息達へそれぞれの糞みたいな急所をしっかりと一つ一つしっかりと蹴り上げ、中には踏み潰したりもしましたね。ま、あれは軽い事故って事にしておきましょう。
それに〇〇が破裂しようが知った事じゃない!!
私は昔から父と兄様より加減の出来ない事でよく注意を受けていましたが、今回はその匙加減をする必要すらないでしょう。何故ならアレは人間の皮を被った魔獣なのです。言わば私の行為は正当防衛です。
そうして見事囲みを突破した私は貴族令嬢としてでなくっ、一人の女性としての尊厳を失いかけた男爵令嬢へ真っ白なテーブルクロスマジシャン宜しくと言った具合に素早くテーブルより引き抜けば、そっとそれで令嬢の身を包み隠しました。
あぁそうですね。最後の派手な音はお茶会の為にこれでもかとお菓子やフルーツを盛られているだろう大きなテーブルに掛けられていた真っ白なテーブルクロスを引き抜いた時に生じた音です。
当然の事ながら食べ物達には大変本当に申し訳ない事をしたと心より反省をしましたよ。
何故なら私はマジシャンではないのですからね。
また無残にも床へ散乱してしまったそれらを片付ける労力を押し付ける事となったアップソン家の使用人達にも……。
ですが敢えて私は使用人達に謝りはしません。
何故ならこの場にいた使用人は皆立派に成人した者達なのです。
それなのに幾ら仕えるべき娘達とはいえっ、後もう少し私がここへ戻るのが遅ければ――――いえっ、今でも十分問題でした。
そう7歳の稚い少女は力尽くで仰向けに床へ倒されただけではなく、カートと呼ばれし馬鹿子息に馬乗りにされ、レモン色のフリルとリボンをあしらった可愛らしいドレスは膝上まで捲られればです。ほっそりとしたカモシカの様な足を露わにされていたのです!!
実行犯はカークと呼ばれし子息ですけれどもです。それを唆したのが同じ同性だと思えば吐き気だけでなく眩暈まで感じずにはいられませんでした。
ですので私は令嬢へテーブルクロスで包む前にカーク子息の急所を他の誰よりも強く蹴り上げました。
「っ――――⁉」
カーク子息は蹴り上げられた瞬間狂った様に撫でつけられた黒髪を振り乱し、そうして馬鹿みたいに何度もぴょんぴょんと飛び上がった後は床へゴロゴロと勢いよく蹲りながら今もまだ悶絶しています。
ふーむ、どうやらクリーンヒットだったみたいで呻き声すらも上げる事が出来ないようです。
ザマアミロ。
しかし私には存在しない器官故にその衝撃は測り兼ねますね。
まぁ大事な所が将来使い物にならなくとも然して問題はないと言いますか、将来害悪にしかならないモノを今のこの段階で駆除出来たのは僥倖としか思えないでしょう。
そしてただ状況を見つめるだけの使用人と言う大人達の罰として、散らかったものの片づけくらいは何て事のない罰にもなり得ないでしょうね。
「ごめんなさい、気づくのが遅くなって……」
「い、いえっ、あ、あ、ありが……!!」
随分と心細くまた深く傷ついた事でしょう。
私は彼女をそっと抱き上げそのまま連れ帰ろうと思った時でした。
ええっ、アイツがですよ、あの阿婆擦れが更に絡んできたのは……。
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