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第一章 突然の訪問者
【8】
しおりを挟むまぁ私は一般的な子爵家の子女で特に私は三女と言う余り者要員に過ぎませんが、しかし我がジプソン子爵家は武門を尊ぶ家柄でもあります。
その辺りにいるだろう軟弱な子息達よりも私は毎日心身共にがっつりと鍛えているのです。
万が一ターゲットに選ばれようものならば完全に返り討ちにしてくれると言う自信はしっかりとありましてよ。
その気概が伝わったかどうかはわかりませんが、この手の問題に私は直接関与された事は未だ一度たりともありません。
また普段よりこういう陰湿系のお茶会には体質的に合わず今までやんわりと避けてきたのですが、あの時はちょっとした手違いで参加する事となったのも偶然その日で御座いました。
最初から半ば無理やり参加させられたものでしたから私は到着早々何やら居心地の悪さを感じ、適当に挨拶だけを済ませればそのまま伯爵家の庭を優雅に一人散策へと向かっておりました。
何しろアップソン家の奥にあるバラ園はとても美しいと定評がありましたからね。時間を潰すにはもってこいなのです。そうして気分良く散策を終えた私が戻れば、場の雰囲気は最初の頃よりも明らかに悪い方へと変わっていたのです。
周囲にいる子息や令嬢達は完全に怯え、件の令嬢を救う事も出来ずにただただ次のターゲットになりたくないと必死に息を殺し、この狂ったお茶会の終了を今か今かと待っていましたよ。
何しろ彼等もまた年端のいかない子供達なのです。
まぁ何の因果なのかその日の年長者は私だけでしたから……。
そうして会場のど真ん中で――――とは言いましても高が子供の集まりなので広さはしれています。
しかしまさか目の前でこんな事が堂々と行われているとは本当に信じ難いとしか言えませんが、でも知ったからには目を逸らさず問題と向かい合うと言う姿勢は、これぞジプソンの血のなせるところなのでしょう。
本当に迷惑極まりないと思いつつも私はゆっくりと深呼吸すると共に今一度しっかりと己自身へ気合を入れ直しましたの。
サブリーナとその取り巻き達は件の男爵令嬢を囲い込めばです。何故か決して周りには悟られていない……と強く思い込んでいる様な愚か者達。
これだけ開けっ広げに行動していれば、譬え気付きたくなくとも普通に気づいてしまうと言うものです。
何と言っても子供の声は男女問わず大きく甲高く、また煩いもの。
またこそこそ……とは違いますね。
誰がどう見ても隠れているとは言い難く、普通に考えてもある意味堂々とお茶会のど真ん中で愚行を行っていたのですからね。
本当に色々と突っ込みどころ満載なのですが不思議とこの愚か者達は――――。
『きっと自分達以外に他の誰にも気づかれてはいない!!』
なんて馬鹿の一つ覚えの様に思い込んでいるからこそ、最初は小声だったものも次第にその声は徐々に大きくなっていくものなのです。
あろう事かここにいる阿呆者達はその事に全くと言っていい程気づかず、秘密でない秘密のいけない遊びとやらにかなり興奮しきっていたようですね。
このドぐされ根性腐れクズ共が!!
コホン
申し訳ありません。
つい昔語りに感情移入をしてしまい、少しばかり本音が漏れてしまいましたね。
そうして阿呆者達は周りを囲い込んでの悪口から始まり、相手が子供ながらに嗜虐心を煽る様な行動をとればとる程、ターゲットの令嬢に対する虐め……いえ、あれはもう虐めの域を当に超えていましたよ。
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