【改稿版】旦那様、どうやら御子がおデキになられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉ 

Hinaki

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第一章  突然の訪問者

【5】

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 とは言えヴィヴィアン自身が令嬢の存在を全く知らなかったと言う訳でもない。
 だからこそヴィヴィアンは今日の日が来る事を覚悟していたと断言してもいい。
 でも今は己の感傷に浸る事なく、現公爵夫人として成すべき事を成さねばいけないと彼女は自らを奮起させる。
 
 心の奥で密かに傷つき、血の涙を流そうとも……だ。

 何故ならヴィヴィアンの夫は今こうしている間にも帝国内で起こっただろう災害で帰宅する事も出来ず、日々秒単位で仕事に忙殺されている。故に当主不在時は妻である彼女が公爵家を守らなければいけない。

 それにしてもである。
 まさかこの時期によりにもよって……。


「兎に角ですね。申し訳御座いませんが旦那様は暫くお仕事でお知らせしても直ぐにはお戻りにはなられないでしょう」
「なんですって⁉ そんな感じに言っておけば簡単に小娘一人くらい叩き出せるとでも思っているの!! ふふん、お生憎様っ、私はそこら辺の大人しい令嬢とは訳が違うんですからね。何と言っても私のお胎の中にはふふ、そんな風に澄ました顔をしているあんたと違ってあの人との大事な子供がいるんですからね!!」

 ふんっと鼻を鳴らして勢いよく立ち上がれば、ソファーに腰掛けているヴィヴィアンを見下ろし……いや、もう完全に蔑み、勝ち誇った様な強い口調で言い放った。

 その様子にヴィヴィアンの背後で控えているであろうシンディーは今直ぐにでも目の前の令嬢を絞め殺さんとする衝動に駆られる気持ちを抑える事無く強烈な殺意をこれでもかと放っている。
 何時もはそんなシンディーを窘める側のダレンですら極僅かではあるがダンディーな容貌をしかめれば、こちらもシンディーに負けず劣らず静かに殺意を令嬢ヘと放っていた。

 一方ダレン同様プライステッド公爵家の双翼と称えられし家政婦長のウィルクス夫人はと言えばである。
 取り敢えず現時点では殺気を放っては――――いない。
 だが現状に満足はしていないと、背後より醸し出される圧をヴィヴィアンはそっと感じ取っていた。

 そしてこの混沌カオスと化した室内に逃げ遅れた被害者が一人存在していた。

 応接間の隅っこで現在進行形で必死に自身の存在を出来るだけ空気になろうとしているジョナスは、誰が見ても最早失神寸前であるのは明白だ。
 まぁある意味ジョナスにとってこの案件は立派な執事となる道への一種の試練なのかもしれない。 
 

 頑張れジョナス!!

 ヴィヴィアンはにっこりと、まるで全てが他人事の様に可愛い子へと密かに心の中で応援をしていた。
 そう自身に降りかかっているだろう問題をまるっと棚上げにして……。
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