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第二部 第三章 それぞれの真実と闇
18 異世界での悲劇 メルチェーデSide
しおりを挟むその次は見た事のない異世界だった。
私の知っているバルディーニの楽園とは違い神の存在しない……いや、この世界にも神は存在しているらしい。
私達の様に滅びを迎えた神もいれば……ほぉ不思議な事もあるものだ。
人間自身が神となり人々を幸せへと導く。
然も一人ではない。
複数存在するのはとても面白いと単純に思えた。
まあどの世界の人間も相変わらず欲深い所は少しも変わりはしない。
そしてこの世界でも人は争う事を止めず、常に己が領土や益を求めて争っていた。
平等に分け与える事無く、いや中には幸せを分かち合う者もいればそれさえも奪う者はいた。
私とローザはそれでも比較的……いやこの世界では唯一平和な国だと言えるのかもしれない。
確かにその国も過去に大きな戦いを繰り返してきたけれどもだ。
七十数年前に最後の対戦で大きく大敗して以降それを教訓として戦争を放棄したと言う。
果たして永久に戦いを放棄出来る事は可能なのだろうか。
真実この国自身は戦わずを貫いたとしてもだ。
攻撃側が貪欲に国土を奪おうと襲い掛かれば不承不承ながらも生き残る為には対応せねばなるまい。
攻撃されるのを喜んで受け入れ死す者等この世に絶対いないと言うか先ずは存在しないだろう。
何処まで貪欲な国々より戦いが回避出来るのか、またそんな国へ後れを取らぬよう常に上位を保ち続けられるのかがみものだ。
此度私はローザの母親として転生をした。
ローザは華と言う名の可愛らしい娘で、彼女は生後間もなく難病である事がわかったのである。
然も治療困難なもので恐らく長く生きられたとしても大人になるまでは生きられないと、家族揃ってそれこそ必死に何軒もの病院を巡る度、同じ事を、絶望を与えられ続けたのだ。
あっと言う間に十数年が経ちローザはゆっくりとでも確実に弱っていく。
そうして最後に訪れた病院でローザの、華の主治医としてまた恋人となり私の前に現れたのはガイオだった。
ガイオとローザは数千年後の長き年月を経て漸く言葉を交わすだけでなく愛を囁く事が出来た。
しかしそれはほんのひと時だけの逢瀬。
だがこれまでの繰り返しの人生の中でローザは、華は一番幸せだったと思う。
それなのにだっ。
インノチェンツァの奴が二人の前へだ。
誰もいない隙を狙って、もう風前の灯火状態の華の命を一瞬にして奪ったのである!!
何処までだ。
どうしてそんなにも執拗にローザを狙うインノチェンツァ!!
ローザが一体お前に何をしたと言う訳でもないだろうに何故だっ。
私はインノチェンツァの魂の器であろう看護師へ飛び掛かったのだが既に時は遅く、インノチェンツァの魂は一瞬の隙を突いて器よりするりと抜け出していた。
器とされし看護師は全く訳が分からないと言った様子で……と言うよりだ。
あいつの気紛れによってただほんのひと時だけ操られていただけ。
だがここは法治国家故にその看護師は罰を下された。
それが神に干渉を受けた人間の末路にも思え、そこは何とも居た堪れなく感じてしまった。
以前はこの様な感情等持たなかったと言うのにだ。
私もまた人間と深く関わり過ぎたのやもしれん。
ガイオとインノチェンツァ。
遠い異世界で再び因縁深い二神と出会ってしまったと言うのか、ガイオとはこれで三度目となる。
今更バルディーニの住人が揃って何とする。
神の時代はもう遠い昔に消え去ったと言うのにだ。
だがここで私は新たなる神……女神と再会した。
エレウテリオが想い続け、その強い想い故に失い悲しみの中で強い呪いを生み出せばだ。
そうして諸悪の根源となる神殺しの剣を完成させただろうダリアの花の女神ダーリアだった。
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