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第二部 第三章 それぞれの真実と闇
5 エレウテリオの後悔と掛けられし呪いの真実 エレウテリオSide
しおりを挟む俺はどうすればよかったのだろうか。
ローザを失った悲しみと怒りにより己が御力を解放させると同時に暴走させればだ。
そうして彼女を死へと、いや彼女の誕生より絶望しか与えなかっただろう世界をガイオは今崩壊させている。
そこに慈悲なんてものは存在しない。
神然と、身に余り過ぎる力を暴走させ今この瞬間も世界を崩壊させるガイオは何処までも神々しい神だった。
俺はそんなガイオの傍で呆然と、一切の防御もせず……と言うか彼とは歴然とした神格の差があるのだ。
大神であるガイオと何処にでもいる一般人ならぬ神の俺。
俺の内包する全ての御力を使ったとしてもきっと一分も持たないだろう。
それだけの圧倒的なる力の差、全ての……最高神とは何もサヴァーノを意味するものではない。
ガイオこそが最高神と称えられるに相応しい神なのだ。
だが俺はそのガイオへ、彼が唯一愛おしむローザへ何をした?
ある意味孤独で神付き合いの下手な俺へそこは罷り間違ってもダーリアの様だとは言わない。
しかしガイオやローザは自身の務めをこなす合間を縫っては遠い山深くへと住んでいる俺の許に何度も訪ねてくれていた。
特にダーリアを失った頃のローザは甲斐甲斐しく何かと俺へ心を砕いてくれていたのだ。
『エレウテリオ、貴方は一人ではないのよ。また貴方を大切に思う友人でありそして家族として思っているのは私だけではないわ。だから少しずつでもいいの。何時かそうね、少し……ほんの少しづつでもいいわ。貴方の心を皆へと開いてみて……』
俺が憎しみに憑りつかれようともローザ、それから彼女の護衛よろしくと言った具合に彼女へ付き纏っていたメルチェーデだけは姿の変わりつつある俺への態度は今までと一切変わる事がなかった。
ああ心の中では当にわかっていたのだ!!
ローザ達の優しさを俺は心の何処かでちゃんと理解していたと言うのにだ。
何故、一体どうして俺は友人であり家族でもあるガイオをだっ。
ただの一度すらも面識のない熾火の神アーマトだと認識してしまったのだろう!!
そして何故っ、咄嗟にとは言え割り込んできたローザの背に剣を突き立ててしまったのだろう!?
俺は、俺はとんでもない事を……。
永遠に取り返しのつかない事をしてしまった――――。
神殺しの剣。
それは文字通り神を封じる為のもの。
だが俺はどうしようのない想いを抱いたままそこへある呪いを符呪してしまったのだ。
そうあの剣を受けた神はただ封じられるだけではない。
一度あの剣を受け止めれば神としての不老不死の肉体を失うだけではない。
普通ならばサービナの支配する人間の輪廻の輪へと回収されれば時を経て、神としてでなく人間へと転生をするだろう。
しかし生憎俺の狂った……憎悪に満ちた心は人の身となってもアーマトを赦す事が出来なかったのだ!!
ダーリアを殺したアーマトだけは何度転生しようともだ。
決して幸せにならぬよう俺は自身でもわからない程に呪いを幾重にも施した。
その一つが人間の、輪廻の輪へは決して入れぬ事。
それは永遠にその魂は浄化されずまた救われない事を意味するもの。
浄化されないまま、穢れた魂のまま何処までも堕ちていく事を願ってしまった。
二つ目は神としての肉体を失えどもその御力は神の時のもの同様に存在する事。
人の子の身で神と同等の御力を持つ稀有な存在……まさに祝福されし者と思うか。
だがこれは決して祝福等ではない。
ある意味最初こそはきっと喜ぶのだろうな。
何と言っても神の力を持つ事が許される稀有な存在としてな。
きっと自分こそは選ばれし存在なのだと――――俺はその勘違いを期待した。
何故なら神の御力は人の子が持つには余りにも膨大で凄まじいエネルギーの凝集体。
普通に考えてもわかるだろう。
余りある力にはそれに見合う肉体が必要である事に……。
神としての肉体があってこそ計り知れない御力をその身に宿す事が出来様ものをだ。
だが人の身には……恐らく、神とは違う余りにも脆弱過ぎる肉体ではきっと御力には耐えられないだろう。
早くて十年と少し。
長く持ったとしても二十年、よくて四十年が限界だろう。
百年なんて絶対に肉体は持つ事はない。
だから永劫の、そして短い人生を果てしなく繰り返す。
ダーリアのこれより先ずっと生きて行くだろう時間を短くも繰り返される転生の中で精々反省するがいいと思った。
まあ反省したとしても赦す気等絶対にないのだがな。
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