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第二部  第一章  囚われのヴィヴィアン

1  やはり始まりは毎度お馴染みの突撃〇〇の訪問者?  ヴィヴィアンSide

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「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」


 ?
 可笑しいですね。
 この言葉フレーズは何処かで、ええ確かに以前聞き覚えがあるのは何故でしょうか。
 

 然もほんの二、三ヶ月前にもやはりこの応接間で、そして今と同じ様な位置で、あの時と同じ様に応接間の隅っこではまたしてもです。

 何と間の悪い事に今も現在進行形で必死に自身の存在を空気へ化そうと頑張っているジョナスは、あの日と同じく既に失神寸前となっておりますわね。

 本当にジョナスは何時も困難より回避……いえ、きっとあの子は自らこうして困難へと突っ込んでいるのかもしれません。

 でもその様な所も私にしてみればとても好ましいのです。
 

 ええ何と申しましてもおドジな子程可愛いと言いますでしょ。


 え?
 
 それは馬鹿な子程……いえいえ断じてジョナスはお馬鹿さんではないのです。

 本当に彼はとても賢い子なのですもの。

 ただ、ええそうただ少しばかりおドジなのですわ。

 それからほんの少し慌てん坊な所もありますわね。


 でもそれを含めてジョナスと言う青年が可愛らしいのですから全く問題はありません。
 ああまた何時もの様にお話が逸れてしまいましたわね。

 
 しかし何故か全てがあの時と同じセッティングなのは私の気の所為なのでしょうか。


 まあ前回と違う所と言えば目の前でまだペタんこなお腹を愛おしそうに撫でていらっしゃる令嬢が、サブリーナ嬢ではなく全くのである事ですわね。


 ですが問題はあの時と同様に旦那様がお留守の時に限っての事なのです。

 前回は災害の復興故にあちらこちらへ奔走されておられましたし、此度は魔導省関係のお仕事で郊外へ視察に二、三日程お出掛けになられたばかりです。

 どちらに致しましても皇族であり公爵であられる旦那様の行動が外部へ筒抜けなのはある意味問題ではないのでしょうか。

 そして私は――――と言えばやはり予想通りの第二のサブリーナ嬢の出現により、ここは真剣に我が身の振り方を検討……いいえ即刻準備に入らなければいけないのでしょう。


 何故なら私の此度の人生は運命へ抗う事をコンセプトに掲げておりますもの。


 ですので少しでも腹ボてバッドエンドな展開の気配を察知したのであれば、きちんと危険を回避するのが当然たる行動なのです。


 とは申せ前回の逃走はたった二十日間で呆気なく終わってしまいました。

 然も気が付けばサブリーナ嬢は既に公爵邸を後にされておられただけでなく、驚く事にお腹の御子は旦那様との間に儲けられたのでないと伺いましたので一応結果オーライとなりましたがしかしですわ。


 人生とは何事もそう甘くはないのだと私は、これまでの数々の転生で十分過ぎる程に学んだ心算なのです。


 ええ、真実目の前におられる令嬢と旦那様が男女の関係となられていたのであれば――――。


 ちくん。


 これは一体どうしたと言う事なのでしょうか。
 
 何やら胸の奥の辺りが、ええ旦那様と目の前の令嬢がまるで私と旦那様の閨での様にです。

 ほぼほぼ毎晩と言いましても差し支えないくらい私は何時も旦那様の熱過ぎる熱によって何処までも高みへと押し上げられれば、そうして何度ももたらされるだろう快感によって目の前が真っ白となり弾けてしまうのです。

 それを飽く事なく空が白むまで何度となく繰り返され旦那様の、リーヴィの熱で私の頭と身体は燃え尽されるかの様に意識を失えば、今度はまた彼の熱くも硬い彼の昂ぶりによって何度も最奥を突き上げられながら目覚めると同時にまた彼に愛され――――。


 あ、愛され……。


 ツキン――――。


 ま、まさか私とリーヴィーの時と同じく彼女にも彼は同じ様に愛おしんでいらっしゃる……の?
 そしてリーヴィーは真実私を愛おしんでいらっしゃるのかし……ら。

 でももしそうだとすれば目の前の令嬢とリーヴィーは一体どの様な関係になると言うのでしょう。
 また私とリーヴィーとの関係は?


 ズキン!!


 あ、胸の奥が、考えれば考える程に胸の奥がズキズキとそしてじくじくと何とも言えない痛みと同時に疼きが襲ってくるのです。
 お客様がいらしていると言うのにも拘らずこの場で泣いてしまいたくなるくらい胸が切なくも締め付けられるのは一体どうしてなのでしょうか。


 淑女として、公爵夫人としてまたリーヴィーの正妻として毅然とした態度で接しなくてはいけないと言うのにです。

 目の前の令嬢は身重でとても心細い思いをしていらっしゃるのだと言うのにですよ。

 またたとえ近い将来リーヴィーと共に私をバッドエンドへと導く様な御方であったとしても今はまだその時ではなく、何かそう彼女が安心出来る様な言葉をお掛けしなければいけないのに――――っ⁉


 どうして私は前回と同じ行動が、普通に声を掛ける事が出来ないのでしょう。

 それと同時に染み一つない真っ白なシーツへほんの一滴の墨が落とされた様に私の心へ、私自身も気付かぬままにトロリと心の中へ真っ黒なものが音もなく静かに溶け込んでしまったのです。
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