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第一部  第五章  拗らせとすれ違いの先は……

23  愛する?貴方と共に生きる事  ヴィヴィアンSide Ⅱ

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 わからない。
 本当にわからないのです。
 

 今までの転生で一度もこんな風に感じた事なんてなかった。

 ああ日本で、結人さんとほんの少しの間ですが永遠とも思えたあの幸せの時間ときと、今リーヴィと過ごしている間に感じる想いは不思議な事に同じなのです。


 しかし結人さんがリーヴィである訳なんてない……なんてどうしてそう思うのでしょう。

 ええ私が過去に三枝 華として生きていた様にもしかすると結人さんもリーヴィとして転生をしたの?


 いえいえその様な都合の良い偶然なんてある筈がないでしょう。


 でもだとすれば今起こっている奇跡の様な幸せの時間は一体。
 そしてサブリーナ嬢の事も気がかりです。
 まさか私が抗い続けた故に今のこの世界で何か変化が起こっているのでしょうか。
 

 ああ、それにこうも考えられます。


 私にこれ以上ないくらい幸せを味合わせた瞬間あれよりももっと恐ろしいバッドエンドが両手を広げて待ち受けているかもしれないのです!!


 や、やはりここは素直に危機回避能力のまま扉の向こう側へ逃げ出した方が安全なのかもしれません。

 こんな私を慕ってくれる大勢の者達には非常に心苦しいのですがしかし此度の人生の目標を何としても貫徹したいと私は思うのです!!

 そうして悩んでいる間に夕食は終わりシンディー達によって入浴を済ませれば、今私は一人私室で寛いでました。


 ええ誰もこの部屋にはおりません。

 いるのは部屋の主たる私一人のみなのです。

 就寝前なので今は薄い夜着の上にガウンを羽織った姿です。

 今ならば、そう今ならば逃げ出すのにまたとない好機ある事も確かなのです。

 ええその為に目の前にはあの何処〇ドアも出しておりますのよ。

 だからただ思う場所を連想し扉を開け、ほんの一歩踏み出せば自由は目の前なのにもですっ!!


 なのにどうして私は行きたい場所も、また何時まで経っても扉を開ける事が出来ないのでしょう。


『奥方様もうこの屋敷にサブリーナはおりません。サブリーナの胎の子は旦那様の御子ではなく昔馴染みの伯爵家の子息との間に出来たそうです。ですからもう安全ですよ』


 入浴後寝支度を済ませシンディー達は退出しようとした際に優し気に微笑めばそっと私へ教えてくれたのです。
 

 もう何の心配もないと。
 安心して良いのだとシンディーだけでなくリラやエイミーもにこやかに微笑んでいました。


 一体何がどうなってその様な事になったのかはわかりません。

 でも確実に運命は、私の辿ってきた今までのどの人生とも今世は明らかに違うのです。

 しかしだからと言って第二第三のサブリーナ嬢が登場しない訳でもないでしょう。

 何故なら私が運命へ抗った様に、運命もまた違う顔を見せる可能性がないとも言い切れないのです。
 

 今までの私ならばきっとシンディー達の言葉を聞いたとしても迷わずこの扉を潜れば新しい一歩を即座に踏み出していた筈。


 ええ本来ならばそうしなければっ、また違うバッドエンドはもしかすると今までよりももっと恐ろしくそして悲惨な想いをする可能性を否定出来ない――――でもっ、でもっ、万に一つハッピーエンドを迎えられる可能性がほんの少しでもあるのでは……?


 今のリーヴィとならばそれも可能ではないのでしょうか。


 何故に私はヴィヴィアン・ローズとして、また三枝 華としての厳し過ぎる人生を繰り返していたのか、そしてその繰り返しに一体何時終わりがくるのかなんて今の私には皆目見当がつきません。
 

 それでもです。

 それでも私の心の何処かに今のリーヴィーを信じたいと思う気持ちも存在するのです。
 
 これが、この気持ちがリーヴィーを愛しているかと聞かれればはっきり申しましてまだ自信を持って『はい』と答えられないでしょう。

 だけど――――。


「まだ起きて……いるのかな?」

「旦那……リーヴィー……?」

 寝室の扉を開けて入ってきたリーヴィーは、そっと背後より優しくもそして力強く私を抱き締めました。

「――――った」
「はい?」

 私の方へ顔を埋めながら話されている所為なのでしょうか、余り上手く聞き取れません。

「良かった、また貴女を失うかと思った」

「あっ⁉」

 そうでした。
 悶々と悩んでいたのであの扉をそのままにした状態でしたわね。

「あ、あの……」

 ごめんなさいと素直に謝ろうと思った瞬間、リーヴィーは物凄く意地の悪い表情かおをして言うのです。

「これより先何度貴女が逃げ出しても僕は絶対に貴女を見つけ出してみせるよ。世界の何処へ逃げて行こうともきっと僕は愛する貴女をこの腕の中へと取り戻してみせる。そうしてだからね、貴女を見つけ出したら……」
「え、あ、きゃあっ⁉」

 ひょいと私の背と膝裏へ彼は手を差し入れれば私を横抱きにし、そうしてすたすたと寝室へと向かうのです。

「ちょ、リーヴィっ、私は重いのですからっ!!」

 少しばかりの抵抗を試みますけれどもそれはやはり心ばかりなもので……。

「これからうんとそうだね。貴女をぐずぐずに蕩けさせ、二度と僕の元より逃げ出そうとする気をほんの少しでも起こさせない様に僕は夜通し貴女を、ああ先日逃げ出したお仕置きとして今宵から連日朝まで貴女を愛してあげるよ。どの様に貴女が嫌だと、そう貴女が何度となく泣いたとしてもだ。僕がどのくらい貴女を心より愛しているのかを思い知らせてあげるよ」

「ちょ、ちょ、ちょ……そ、そそっ、それは余りにも〰〰〰〰っ⁉」

 こ、これはまた違う意味でのバッドエンドな気がしない訳でも〰〰〰〰っ。

「バッドではなく僕達のハッピーエンドだよヴィー。だってこれは僕達の子供が出来るまで続けるからね」
「――――っ!?」


 それはもう清々しい過ぎる程のイケメン様万歳状態の笑顔で、そして何気にさらりと爽やかに厭らしい事を言っているではないですかっ!!


 でも、それでもです。
 ほんの少しだけ、ええほんの少しですよ。
 今のリーヴィーとそう遠くない新しい家族と笑いのある幸せな日々もいいかな……って思う自分もいるのです。
 ですから……。


「リーヴィ」
「ん、何かな?」

「あ、のね、その優しくですね。優しく愛して下さい……ね」

 思い切って、ええ恥ずかしいのを頑張ってお願いしたのにもです。

「――――却下。本当に無自覚は怖い。今のでもう止められない」

「嘘っ、うぅ……⁉」

 寝台まであと少しと言う所で突然唇を、リーヴィーの熱くも蕩ける様でいて、もう私の全てを貪られる様な激しい口付けをされ――――。


                              第一部完結
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