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第一部 第五章 拗らせとすれ違いの先は……
1 後悔と言う名の懺悔 リーヴァイSide
しおりを挟む僕は、俺は……に出逢う為だけに今を生きていると言ってもいい。
これまで俺は……へ出逢いそして共に同じ時を生き、叶う事あらばもう一度最初の時へと戻り今度こそ愛し愛されたい!!
なのに俺達は中々思う様に巡り合えず、第一俺自身の記憶を取り戻したのはごく最近だったのだ。
一目逢った瞬間に誰よりも焦がれる様な想いを抱いた女性なのに――――である。
情けないと思いつつもそこはやはり運命の歯車によるところなのだろう。
何しろ今の俺には昔の様な力はもうないのだからね。
だが取り戻したとはいえまだまだ記憶は酷く曖昧で断片的なものばかり。
それでも俺は漸く愛する貴女をこの腕の中へ抱く事が出来たと言うのにだ!!
愛する貴女が俺の目の前より逃げてしまった瞬間に再び襲い掛かる様な焦燥感と喪失感に絶望感。
いや、まだ完全には絶望してはいない。
何しろ貴女は私の前よりほんの少し逃げただけでまだこの世で生きているのだからね。
そう俺はまだ貴女を再び失ってはいない。
ねぇ、一体貴女は俺をどのくらい覚えているのだろうか。
俺は覚えている限りで言えば何と犬だった時もあるのだよ。
然もこの屋敷で、リーヴァイがまだ幼い頃に飼われていたラブと言う真っ白な犬だったかな。
母上であったプライステッド大公妃がお茶会を催した時に何故か犬である俺は問答無用とばかりに会場へと連れて行かれればだよ。
まだ成人もしていない子供達に『可愛い』と言っては揉みくちゃにされるだけかと思えば、キラッキラに着飾った女共に触られるだけならばまだ我慢は出来たのだ。
でも流石に人間よりも何倍も嗅覚の優れた犬である俺にしてみればだよ。
彼女達の身体より放つ香水の香りのお蔭で鼻が馬鹿になると何日もクシャミが止まらなかったのさ。
獣医師にアレルギー性の鼻炎だと診断され、そこで漸く下らないお茶会へ参加しなくともよくなったのだと教えられた瞬間はとても嬉しいかったよ。
でもその反面偶に参加をしていた貴女に逢えないのはとても悲しかったよ。
所詮犬と人間ではどうする事も出来ないと言うのにね。
次は辺境の寂れた町で何とこの俺が虫だったのだよ。
それも薄汚れた明かりに群がる蛾だった。
その日も明かりへ誘われる様にそこは蛾の習性に抗えないのは否めないけれども止まった先の窓から見えたのは――――っ⁉
苦痛にいや、もう全てを諦めきった表情のまま汚らわしい男共にっ、組み敷かれ抱かれている何て可愛らしい表現ではなかった。
最早あやつらにとって貴女は女性としての尊厳どころか人間としても扱われてはいなかったのだ!!
汚らわしいもので世界で最も清らかな貴女を何処までも穢していく男共に俺は苛立ちそして狂わんばかりの激しい嫉妬に駆られはしたけれども結局何も出来なかった。
単なる虫であった俺には何も出来ずまた俺に見られたくはないのだろうとわかっていてもだ。
俺はその窓よりほんの少しでも離れる事が出来なかった。
だが所詮はただの羽虫。
貴女を救う事も何一つ出来ずにそのまま数日も経てば呆気なくその生を終えてしまったのだよ。
そうして生を終える中で俺は願ったのだよ。
今度こそは絶対に何があっても貴女を助けられる者でいたい――――とね。
まあ次の転生で#漸く俺は真面な人間へと生まれ変わる事が出来たのは正直に言って嬉しかったね。
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