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第八章 それはある日突然に
10 ある意味での出会い
しおりを挟む離婚届を提出する十日前に私達は新たなる住処へと引っ越しをした。
何故なら離婚の慰謝料としてこの家と土地を処分する為である。
私はこの十三年間負わされてきただろう苦労についての対価として慰謝料を請求した。
そして夫は異を唱える事無く同意したのである。
離婚当日はとある銀行へと赴き名前を告げれば奥にあるだろう一室で土地を買ってくれた工務店さんと司法書士さんの三人の男性と私達夫婦に母と銀行員さんの七人で諸々の金額の説明と取引が粛々と執り行われた。
抑々銀行と言えばATMか窓口しか知らない私は生まれて初めて奥にある部屋へ入ると言う貴重な体験までさせて貰い、また帰りは夫が送ろうと言うのを遮り、三人の内一人の男性が近くの駅までと言いつつちゃっかり伏見区役所近くまで送ってくれた。
きっと支払った慰謝料について夫より私が何かをされるかもしれないと心配してくれての事だと思う。
その心遣いがめっちゃ嬉しくそして何よりも有り難かった。
私と母は車を降りお礼を述べたその足で離婚届を提出すれば無事に桃園の姓を抜く事が出来たのである。
そして晴れて私は浅田 雪菜へと戻ったのだ。
また当然の事ながら元夫となった彼には私達の新しい住処を教えてはいないしこれからも教える心算はない。
何故なら一度切れてしまった縁は決して元には戻らないのである。
だからこれからもし何処かで偶然出会ったとしても私達は赤の他人として対応するだけである。
そんな私の態度と心は冷たいのかもしれない。
でもそれだけの我慢と努力はこれまでの結婚生活の中で決して怠ってはいない。
とは言えそれで鬱が治ったかと言われれば答えはNOである。
それどころか環境の変化も伴って少しばかり後退をしてしまった。
そうして回復する見込みもなく緩々と時間は流れていく。
そんな感じで一年半と言う時間が経過した頃。
今までは何もかも母と一緒に行動をしていたのだが少しだけ自分で頑張ってみようと言う気持ちになり、ここにきて漸く私一人で通院する事が出来たのだ。
とは言っても電車は精神的ストレスが半端ない。
従って少しばかり交通費は高くつくけれどもタクシーでの通院は問題なく出来る様になった。
また通院が慣れた頃帰りにスーパーへ寄って買い物も出来る様になっていったのである。
しかし全てが順調良く回復する訳ではない。
天候の変化や季節の変わり目、それに何かの切っ掛けでN病院で受けたパワハラや様々な記憶がフラッシュバックの様に思い出してはその都度病状は後退するけれどもである。
でも確実にほんの少しずつ前へと踏み出してもいた。
家事は相変わらず母任せなのは本当に申し訳ないと思う。
料理や物を作り出す気分にはなれず母への負担は大きい。
そんな中で少しだけれど洗濯をしたりお姫達のお世話をする事も出来る様になっていた。
そうしてそんな頃に始めたのが〇〇ブロのブログである。
切っ掛けはめっちゃ単純だった。
単に今の状況について何かを発信したかった。
例えばお姫達の事。
そして鬱の事。
その日によっても毎日若しくは気分の良い日限定だがそれでも心に思い浮かんだ事をつらつらと書いてみた。
またいいねが付くと単純に嬉しい。
そこは沢山の人に読んで貰ってあわよくばトップブロガー何て事は露程に思ってはいない。
ただ単純に私のブログと言う心に思っている事を読んで、知って貰える事が嬉しかったのだ。
家族に話せばめっちゃ喜んでくれた。
母もどんな形でも私が何かをする事に喜んでくれた。
でも毎日は心の負担になる。
だから無理はしない。
単調で平和な毎日。
だけど前と比べて精神的に平穏な日々。
そんな中で私は偶然投稿小説サイトを知った。
最初は普通に読み専で。
でも少しずつ何かを書いてみたいと興味を持つようになっていく。
しかし本当に私が書けるのかはめっちゃ不安。
万が一書いたところで誰にも読んで貰えないかも……といやいや小説と無縁な私が書いたものを読んでくれる人こそが稀有な存在だろう。
小説を書いてみたいでも……とそんな思いを繰り返す日々の中。
気が付けば鬱々と悩んでいるだけでひと月があっと言う間に流れてしまう。
このままだと本当に何も出来ないまま人生が終わるのでは……と思った私は到頭物語を書いてしまったのである。
そうして慣れない作業でかなりもたつきながらも無事に初投稿をする事が出来たのであった。
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