【完結】希望 ~差し伸べられたのは貴方の魂の光でした

Hinaki

文字の大きさ
112 / 130
第八章  それはある日突然に

8  1+1=2ではなく1と1 Ⅱ

しおりを挟む


 結婚してからほぼ十年もの間私達は別居婚だった。

 ただ別居婚とは言え突発的なイベントは盛り沢山で何時も私はそれらに翻弄されていた。

 まあそれらの中でダントツ一位なのはであるのは間違いない。

 そしてこれは前の家と土地を処分した最大の原因でもある。

 のらりくらりと躱したがる夫へ何度も問い詰め、口論ではなく時には取っ組み合いの喧嘩をしつつも何とか聞き出した金額は――――。


 2400


 まあ先ず1000万円の借用書を生まれて初めて見たのも相当驚いたのだが、最終金額がそれだと聞いてそれ以上に吃驚。

 普通に気絶しなかった私を自分で誉めてあげたい。


 昨今数百万単位の借金ならば誰しもしているしそれくらいならば別に何も思わなかった。

 東の震災以降着物業界は相当な打撃を受けたと耳にしては夫へ『会社は大丈夫?』と事ある毎に訊いても『うちは何とか借金もせずに上手くいっている』と声を掛ける度にそう返していたのだ。

 それがである。
 何がどうなってと言うかだっっ。

 然も毎月に支払う金額は30万以上って普通に給料が全部吹っ飛んでいるじゃん!?

 いやいやこの時は既に夫の会社は東の震災で煽りを食らったらしく、会社で働いていたとは言え給料未払い状態。

 その未払いも二年以上経過してからだ。

 今回の借金返済の澱にボソッと呟く様に教えて貰ったんだけれどね!!

 そしてその借金の金額も多分2400万ではなくなのだと言う事も……。


 幾ら家と土地を担保にとは言え支払わなければ何れ住んでいるだろう家より出て行かなければいけない。
 それならば少しでもお金が手元の残る方法を取るべきだと説得するけれどもだ。

 これが不思議にも何故か日本語が全く通じない。
 

 そうズバリこの時の夫には支払うべきお金がない。

 利息が増えるばかりで悩んでいる間に一刻も早く家と土地を売り手に出来るだろうお金はどんどん減っていく。

 なのに夫は最後はこの家と土地を貸付業者へそのまま渡せばいいと言う。

 そうしてだから今は何もしないと何を言い出すかと思えば物凄く見当違いな話をする。

 最初から手放す決意が出来ているのであれば少しでも資産を残せばいいと私は思う。

 おまけに給料未払いについてもだ。
 何故か中々重い腰を上げようとはしない。
 

 苛立つ日々。

 喧嘩と言う口論を繰り返す毎日。

 そして京都内外にいるだろう親類と言う長老達へこういう理由で家を売る事になりました……とお詫び行脚ならぬ説明行脚へ夫婦揃って回っていく。
 

 その間の仕事については夫は給料未払いだと言う事もあり大した問題もなく調整が出来た。

 でも私は?

 私は職場の皆へ頭を下げ簡単に状況を……って流石に借金についてまでは言えない。

 そこは最長老である大叔母へ最後かもしれないからお見舞いへと、うんそれはあながち嘘ではない。

 そうして訪問した先々で家の処分と借金の説明からの頭を下げるのは何故かだった。


 傍にいる夫はどうしてなのか尋ねた親戚と共に事情をに徹していた。

 無論一言も夫からの援護もなければ説明はない。

 然もこの説明行脚は2400万円が分かる前の事。

 先に給料未払いで少しの借金があるからと言う体で家の処分を考えたのである。

 また何も知らなかった愚かな私は夫へこう問い掛けたのである。

『具体的に借金って200万くらいなら家の処分を了承してはくれないだろうから、600か』

 夫は可もなく不可もなくと言った面持ちで頷いた。

 そして私は借金は600万円以下なのだと信じ込んで皆へ説明と共に頭を下げる。

 今にして思えばよくもまあ……いやいや、それでも離婚を考えなかった私って一体なんだろうと思う。


 また家の建て替えも然り。


 十年の別居婚の間に二回だけ改築若しくは土地を半分売ってそのお金で残りの土地で家を新築にしようと、有名な某住宅メーカーへ数ヶ月もの間仕事の合間を縫い、また日勤が終われば直ぐに電車へかけ乗り食事もせず22過ぎ迄日参すればである。

 建築士の人と一緒に綿密に話し合いを行い私好みのキッチンやもうね、パソコン上で綺麗に3D化して家の中を色々見せてくれたりもした。
 
 屋根の色や壁の色の指定をすれば市内に同じ色の家があるからと見せにも連れて行ってもらえた。

 少しずつだけれども着々と出来上がっていく我が家へ私の心は浮き立ち頬はもう緩みっぱなし状態。

 これで私も普通の結婚生活が送れるのだと思ったりもした。

 だが最後のローンを組む時点で毎回白紙撤回となってしまう。

 そして何故か何時もは夫婦で一緒に行くのにこの時ばかりは夫が一人で行くと言う。


 そりゃそうだよね。
 それだけのお金を私に内緒で借金をしていたんだもん。
 普通に連れては行けないでしょ。

 そうして何も知らずに残念な結果を知らされた私はその都度天国から地獄へと叩き堕とされ悲しさと悔しさで涙が枯れるまで泣いてしまう。
 

 あの時私を慰めた夫は心の中で一体何を思っていたのだろう。

 そう思い返せばあれは普通では決してあり得ない事。

 なのにそれでも離婚に踏み切らなかった私も可笑しいのかな?

 ただ普通に幸せになりたかっただけなのに……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...