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第八章 それはある日突然に
8 1+1=2ではなく1と1 Ⅱ
しおりを挟む結婚してからほぼ十年もの間私達は別居婚だった。
ただ別居婚とは言え突発的なイベントは盛り沢山で何時も私はそれらに翻弄されていた。
まあそれらの中でダントツ一位なのは夫の借金問題であるのは間違いない。
そしてこれは前の家と土地を処分した最大の原因でもある。
のらりくらりと躱したがる夫へ何度も問い詰め、口論ではなく時には取っ組み合いの喧嘩をしつつも何とか聞き出した金額は――――。
2400万円。
まあ先ず1000万円の借用書を生まれて初めて見たのも相当驚いたのだが、最終金額がそれだと聞いてそれ以上に吃驚。
普通に気絶しなかった私を自分で誉めてあげたい。
昨今数百万単位の借金ならば誰しもしているしそれくらいならば別に何も思わなかった。
東の震災以降着物業界は相当な打撃を受けたと耳にしては夫へ『会社は大丈夫?』と事ある毎に訊いても『うちは何とか借金もせずに上手くいっている』と声を掛ける度にそう返していたのだ。
それがである。
何がどうなってと言うかだっっ。
然も毎月に支払う金額は30万以上って普通に給料が全部吹っ飛んでいるじゃん!?
いやいやこの時は既に夫の会社は東の震災で煽りを食らったらしく、会社で働いていたとは言え給料未払い状態。
その未払いも二年以上経過してからだ。
今回の借金返済の澱にボソッと呟く様に教えて貰ったんだけれどね!!
そしてその借金の金額も多分2400万ではなくそれ以上なのだと言う事も……。
幾ら家と土地を担保にとは言え支払わなければ何れ住んでいるだろう家より出て行かなければいけない。
それならば少しでもお金が手元の残る方法を取るべきだと説得するけれどもだ。
これが不思議にも何故か日本語が全く通じない。
そうズバリこの時の夫には支払うべきお金がない。
利息が増えるばかりで悩んでいる間に一刻も早く家と土地を売り手に出来るだろうお金はどんどん減っていく。
なのに夫は最後はこの家と土地を貸付業者へそのまま渡せばいいと言う。
そうしてだから今は何もしないと何を言い出すかと思えば物凄く見当違いな話をする。
最初から手放す決意が出来ているのであれば少しでも資産を残せばいいと私は思う。
おまけに給料未払いについてもだ。
何故か中々重い腰を上げようとはしない。
苛立つ日々。
喧嘩と言う口論を繰り返す毎日。
そして京都内外にいるだろう親類と言う長老達へこういう理由で家を売る事になりました……とお詫び行脚ならぬ説明行脚へ夫婦揃って回っていく。
その間の仕事については夫は給料未払いだと言う事もあり大した問題もなく調整が出来た。
でも私は?
私は職場の皆へ頭を下げ簡単に状況を……って流石に借金についてまでは言えない。
そこは最長老である大叔母へ最後かもしれないからお見舞いへと、うんそれは強ち嘘ではない。
そうして訪問した先々で家の処分と借金の説明からの頭を下げるのは何故か私だけだった。
傍にいる夫はどうしてなのか尋ねた親戚と共に事情を聞いている側に徹していた。
無論一言も夫からの援護もなければ説明はない。
然もこの説明行脚は2400万円が分かる前の事。
先に給料未払いで少しの借金があるからと言う体で家の処分を考えたのである。
また何も知らなかった愚かな私は夫へこう問い掛けたのである。
『具体的に借金って200万くらいなら家の処分を了承してはくれないだろうから、少し多めで600万円くらいにしておこうか』
夫は可もなく不可もなくと言った面持ちで頷いた。
そして私は借金は600万円以下なのだと信じ込んで皆へ説明と共に頭を下げる。
今にして思えばよくもまあ……いやいや、それでも離婚を考えなかった私って一体なんだろうと思う。
また家の建て替えも然り。
十年の別居婚の間に二回だけ改築若しくは土地を半分売ってそのお金で残りの土地で家を新築にしようと、有名な某住宅メーカーへ数ヶ月もの間仕事の合間を縫い、また日勤が終われば直ぐに電車へかけ乗り食事もせず22過ぎ迄日参すればである。
建築士の人と一緒に綿密に話し合いを行い私好みのキッチンやもうね、パソコン上で綺麗に3D化して家の中を色々見せてくれたりもした。
屋根の色や壁の色の指定をすれば市内に同じ色の家があるからと見せにも連れて行ってもらえた。
少しずつだけれども着々と出来上がっていく我が家へ私の心は浮き立ち頬はもう緩みっぱなし状態。
これで私も普通の結婚生活が送れるのだと思ったりもした。
だが最後のローンを組む時点で毎回白紙撤回となってしまう。
そして何故か何時もは夫婦で一緒に行くのにこの時ばかりは夫が一人で行くと言う。
そりゃそうだよね。
それだけのお金を私に内緒で借金をしていたんだもん。
普通に連れては行けないでしょ。
そうして何も知らずに残念な結果を知らされた私はその都度天国から地獄へと叩き堕とされ悲しさと悔しさで涙が枯れるまで泣いてしまう。
あの時私を慰めた夫は心の中で一体何を思っていたのだろう。
そう思い返せばあれは普通では決してあり得ない事。
なのにそれでも離婚に踏み切らなかった私も可笑しいのかな?
ただ普通に幸せになりたかっただけなのに……。
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