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第八章 それはある日突然に
6 分かれ道
しおりを挟む裁判沙汰が終わり相手の真意もわかった以上私にとって今現在において生きる目標を見出せないまま鬱々とした毎日をただ茫然と過ごしていた。
今までは何時かきっと謝罪をしてくれるだろうと言う甘い気持ちだけで何とか生き繋いでいた。
でも今はその目標すらも見失ったと言うか、ある意味ブレる事のない相手の考えを知ってしまった事に対し私の心が白旗を揚げてしまったのである。
そうして何をする訳でもなくだらだらと全く意欲のない生活を送っていたとある日の事だった。
最初の切っ掛けはもう覚えてはいない。
ただリビングにいたのは可愛いお姫達にロッキングチェアへ座り何となく日向ぼっこをしている私と、台所で忙しなく動いている母そして和室に籠る夫の三人だけだった。
「……ねぇもしママがこの家に住んでいなくて私とのんちゃんの二人しかいなかったら、一体私はどうなってたのかな」
何を思って私はこの一言をのんちゃん=夫へ放ったのかは謎である。
結婚前は万が一私が先に介護をされる側になってもちゃんとおむつ交換もするとまで豪語していた夫。
そんな彼とはここ数年……鬱を患ってより夫婦の時間なんてものはほぼほぼ存在はしない。
まあ私が常に寝室へ籠りきりだからと言うのもある。
そして夫の仕事より帰ってくる時間が日々遅くなっているのもあるだろう。
だが休日も何かと理由をつけては外出する夫へ特に私は咎める事もしなければほぼほぼ無関心だったのである。
抑々鬱の私が周りへの配慮が出来る様になったのはほんのつい最近の事なのである。
この頃は特に一番大きな目標を失い、謂わば私は糸の切れた凧状態。
然もこの凧に意欲の一欠けらすら存在何てしない完全に風任せときている。
そんな状態で夫への関心と言うか、こちらから寄り添う何て先ずある訳がない。
一方本人は未だ知る筈のないアスペルガー疑いの夫は常にマイペースである。
これまた年々何を考えているのかすらわからない。
鬱の私へ歩み寄る事もなければだ。
出掛ける度に何故か同じお店で何度も大量に買ってくるたい焼きの詰め合わせ。
仕事帰りに至っては同僚に貰ったと言う同じメーカーのケーキの詰め合わせ。
然もそれは帰りが遅い早いは関係ない。
また食べる相手の好みも何もかも無視した様なぎゅうぎゅうに詰められただろう形ばかりのものであるのは明白だった。
縁があって夫婦となったのに、家族なのに何故か最近それは顕著に一緒に過ごす時間が何とも息苦しさを感じてしまう。
だから夫へそれとなく問い掛けてしまったのかもしれない。
二人きりで暮らしていた場合はどうしていたのかと……。
そしてこの問い掛けによってこれより先私達夫婦の関係は決定的なものへと変わっていくのである。
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