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第七章 黒闇の闇の中で
11 深淵の闇の中よりの甘い囁き
しおりを挟む不服申し立てをする為に私は御池にある京都労働局へと向かった。
まあ不服申し立てとは言え今思えば結果は最初からわかっていた。
何故ならそこの担当さんは親切にも『判定が覆る確率は低いでしょうね』と教えてくれたのである。
だがこの時の私はそれこそ一縷の望みと言うものに賭けていた。
いやいや私のこの重さで、然も思いっきり重過ぎる望みだけに流石の糸も非常に持ち堪えるのは辛かったのだろうと思う。
今でこそ見えるものならばその一縷の糸さんへごめんなさいと平謝りをしたい気持ちでもある。
そのくらいにこれは無茶ぶり過ぎるお願いだったのだから……。
でも当時の私は本当に必死だったのだ。
未だに謝罪はおろか何もない真っ白けの状態。
前へと進む切っ掛けも何もなければずぶずぶと少しずつだが闇の底へと沈んでいく身体と心。
おまけにこの頃は常時心不全を起こしっぱなしみたいな状態だったからである。
排尿量も少なく常に胸の中は水でぽちゃぽちゃと溺れている様な感じで息苦しい。
利尿剤等を服用しても余りその効果は望めない。
体重も私至上最高の――――そこは割愛させて頂きます。
私にとって非常にセンシティブな話題なのでご理解お願い致します。
等と冗談を言っている場合ではない。
いやいや冗談でもないのだけれどね。
でも私至上……家族ですら知らない非常に重い体重だったのである。
最初は純粋にこれは脂肪なのだと思い込んでいた。
でもそれが水分だったとわかったのはもう少し先のお話。
とは言えちゃんとそこは純正の脂肪もありますよ。
話は戻り身体面……そこは心臓だからぶっちゃけである。
精神的な負荷が掛かり過ぎれば私のくねくねと曲がりに曲がった血管は景気よくもまあ持ち主の事も考えずに直ぐ収縮してしまう。
要するに鬱でうだうだと悩み苦しめはその分身体へその負担分が襲い掛かると言う仕組み。
そうしてしんどくて動けない日々をベッドの中で送れば、また後ろ向きな事ばかりを考えてしまうと言う実に見事な悪循環と言うか負のスパイラル。
堂々巡りの出口なしの巨大な迷宮。
そんなある日の事だった。
何気に母と一緒にTVを見て流れてきたニュース。
相模原施設19人殺害事件⁉
最初は素直に、そこは普通にあり得ないしどうしてこんな事をするのだろうと思った。
絶対に犯人に対して理解が出来ないとも思ったし、そう言葉にして母と話してもいた。
だが連日流れるニュースを見てそこは決して犯人へ共感をした訳じゃあない。
また私自身何も関係ない人を傷つけたいとは思わないし願わない。
そう何も関係のない人は……。
では関係のある人は?
鬱を発症して二年半過ぎてしまった今の現状。
そしてこの状態を私自身が好き好んで陥っている訳ではない。
おまけに私は毎日眠れている様でほぼほぼ眠れてはいない。
どんなに薬を飲んだとしてもだ。
鬱にいいからと半ば強制的な日光浴。
キノコだって、特にまいたけは鬱にいい食材だからと母がよく料理をしてくれてもいた。
鬱にいいからと色々なものを食べさせられた。
それなのにその効果は一切見られず45歳になっても一人で外出すら出来ない。
安売りだからと気軽にスーパーへも他人が怖くて行く事も出来ない。
飲んでいる薬の関係上……そこは鬱を発症し未だ改善が見られないからと原付へも乗れずに先日の事だった。
到頭その愛車までも手放す事になってしまった。
平成26年1月2日のあの瞬間から私はあらゆるものがっ、自由に生きる事すらままならない様になってしまった。
鬱のお蔭で心臓もボロボロで全くいい所が何もない。
常に心は闇の中。
死ぬ事ばかりを考えてしまう日々。
苛々し過ぎて気が付けば、何本か指の爪を一気に剥がす事もしばしばある。
勿論無理やり剥がしたのだから出血はしている。
でも不思議と痛みを感じない。
そんな時に何かが私の中でそっと密やかに囁くの。
顔は真っ黒に塗り潰されているのでわからない。
でも唯一わかるのは血の様に赤く、大きな口をぱっくりと開けて嫣然と微笑みながら――――。
殺しちゃおうか。
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