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第七章 黒闇の闇の中で
4 苦行と自己満足?
しおりを挟む今現在私はリビングにあるロッキングチェアーへ腰掛ければである。
一体何の苦行なのかは非常に理解し難い。
何故なら今一番直接会いたくもなければ私に触れて欲しくない二人に両腕をがっしりと掴まれた状態で謝罪の言葉……そうこの時の看護部長の心情まで私にはわからない。
だが私の右手をきゅっと握り今まで聞いた事もない媚びた口調で語る桜井さんからのその全く心からのものではなく、素晴らしいくらいに上っ面だけの言葉を並べ立てているのは何とも滑稽でしかない。
しかし滑稽だからと言って笑う事はない。
そう苛立ちが増す事はあってもにこやかな和解ムードには決してならないしなれない。
そして彼女の身体より醸し出されるのは吐きそうなくらいに気持ちの悪いきつい香水臭。
普通自分に非があり自宅まで上司と一緒に謝罪へ赴く際にである。
必要以上の香水臭を、そこは看護師と言う立場ではなく世間一般的な常識としてあり得ないだろうし、また40歳にもなって全くTPOを弁えない彼女には苛立ちしかなかった。
出来れば一刻も早く私の腕を開放して欲しいと切に願った。
抑々気持ちのない謝罪程気分の悪いものはない。
第一理解の出来ない桜井さんの作り出したヒエラルキーの、本当に理解し難い事に私は彼女よりも下の立場だったのだろう。
そんな蔑み虐めてきた私へ上司命令とは言え謝らせられるのは、桜井さん自身にしてみれば中々に屈辱的なものだったのかもしれない。
またアレは単なる桜井さん流の冗談もしくはほんのお遊びだったのかもしれない。
そう譬え私がそれを百歩譲ったとして彼女流の冗談だったとしよう。
冗談だとしてもである。
他人の人生を大きく影響を与え、社会より隔絶させる冗談とは一体どういうものなのか私は理解に苦しんでしまう。
いや、私には一生理解は出来ない。
そして謝罪をするくらいならば最初からしなければいいだけの事。
まあそれすらも彼女には生涯理解する事はいないのだろう。
その証拠に桜井さん側より病院とは別に慰謝料云々の話は一切なかった。
また九州にいるだろう家族にも黙っているのだろうね。
これは一生あり得ない事だけれども万が一私が桜井さんと同じ行為をすればである。
そしてそれを母が知れば間違いなく母は相手の、被害者の許へ謝罪に赴く筈。
あれから時間は経過すれどもである。
ただの一度として桜井さんもだが、その両親からの謝罪もなければ連絡の一切はない。
だからこれ以上彼女と話すだけ時間の無駄。
また八年もの時間が流れたと言うのにも拘らず私はあの日の手の感触が未だに忘れられない。
つまりそれだけ嫌悪感が満載だと言う事なのかもしれない。
ただ言い訳がましくも心無い謝罪に耳が穢されるのを必死に我慢をしていれば、暫くすると彼女達は自己満足したように帰っていった。
そう私は何一つとして許した覚えはない。
幾ら彼女達が謝罪をした事に満足をしたとしてもだ。
それを受け入れた所で私自身の病状が何も変わる事はない。
いや実際あの謝罪のあった夜は久々にオールナイトで自殺未遂を繰り広げたのだ。
そして看護部長がこの日に延べた謝罪と何かしらの保証云々については後日コロっと、それはもう見事なまでに引っ繰り返される事になる何てこの時の私達は全く知る由もなかった。
まあ普通に考えてもだ。
態々日時を決めて部下である職員の自宅まで来て謝罪をすればである。
そこで保証云々の話をする以上それは病院としての総意だと思うだろう。
それ故ひと月半以上もこの件に関して病院はほぼほぼ放置すれば、傷病手当についても二月に入りこちらから母が電話で連絡し初めて向こうが動いてくれたくらいなのだ。
私についてこれからの事を考える時間は病院側にはしっかりあった筈。
だがそう思っていたのはどうやら私と私の家族だけだったみたいである。
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