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第六章  壊れ失うもの

14  最初の一撃 Ⅱ

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 また恐らく桜井さんの背後にいるのは藤沢さんだろう。

 何故なら私が年末の仕事も含め忙しなく仕事をしていればである。
 他院へ患者さんが診察へ行く為の看護サマリーの作成までもがリーダー業務らしく、どうしてそこまで何でもリーダー一人に仕事を抱え込まなければいけないのかが全く私には理解が出来ない。

 でも現状全てのリーダーの業務全般を把握出来てはいない私が一々文句を言える筋合いでもない。

 だからこそ一日も早く仕事をきちんと覚えたかった。
 そうして出来ればもっと分かり易い、これ程までにぐちゃぐちゃに絡まりまくった、誰が見たとしても一見では絶対に理解の出来ない業務内容。

 そして最近分かった事だが藤沢さんによって最初に決められただろうリーダー業務の根本よりも更に事細かく枝分かれし過ぎており、一体何処までが看護業務であるのかないのかすらの判断がつかない。
 

 最初は藤沢さん自身単なる親切心からなのかもしれない。

 しかしそうだからと言って自分勝手な法則を作ってはどんどんそれらを増殖し、後に続く者が全てを把握と言うか一体何処から何をどう把握すればいいのかがわからなくなるのでは本末転倒だ。

 また患者さんにしてみてもいい迷惑だろうと思う。
 
 私達看護師の仕事は


 患者さんがどうしても出来ない事、また病気や怪我で看護をしなければいけないのを行うのが私達の仕事だ。

 決して過剰に看護する事ではない。

 たとえ処方箋一つにしてもFaxで送るのは直ぐにも出来る簡単なもの。

 だがこの病院では、藤沢さん流では他院で処方された処方箋を受け取り一緒にこの病院で処方された処方箋を送る事が罷り通ったとしてでもある。

 それは他のスタッフまたは他院でこれは絶対に通用はしない。

 その時に恥を掻き困るのは患者さん自身なのである。


 だから私はある程度スタッフ自身の自立をも促したかった。
 時間はかなり掛かるだろうけれどもだ。
 世間一般の常識のある病院組織へと戻したいと言うか、変えていかなければいけないと思ったのである。

 恐らく看護部長もそれをわかっていたのだろう。

 藤沢さんへ直接言わない所が問題なのだと思うけれどね。

 まあ正看護師の立場を上だと見なさない藤沢さんに果たしてどこまで看護部長の言葉が通じるかは全くの謎である。
 
 全く上がもっとしっかりしてくれないと、困るのは何時も下っ端なのだからね。
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