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第五章 じわじわと
15 藤沢さんにとってのどうでもいい事
しおりを挟む藤沢さんにとってのどうでもいい事。
それは新しいカンファレンスの在り方。
また既存の方法ではないもの。
そして新しい風。
これはあくまでも私の私見に過ぎない。
ただ私から見た藤沢さんと言う人物は変化と言うものを嫌っている様にも見えたのである。
そしてこの点だけが看護部長と藤沢さんの考えを違える決定的なものなのかもしれない。
現状の透析センターの体制は一般病院では到底あり得ないだろう准看護師である藤沢さんの一人独裁政治体制……って、隣の真っ赤な旗の国の誰かとそれはよく似ているのかもしれない。
自分の意見そして自分の考え一つで周囲のスタッフは皆彼女の顔色を常に窺いながらのまるで恐怖政治さながらとでも言うのだろうか。
そこへはまさかのDrや正看護師の意志はほぼほぼ関係はない。
まさにドンである藤沢さんの意のままに動く世界が透析センターなのである。
その証拠に常連の患者さん程このセンターの真の主またはスタッフ間の力関係を見抜いている者はいないだろう。
そして誰の味方をすれば優遇とまでは言わない。
病院のベッドへ一度でも横になった瞬間、看護を受けるその瞬間心の中で誰しも思う事はただ一つ。
誰よりも、少しでも良く自分を看て貰いたい!!
これはやや語弊のある表現なのかもしれない。
しかしである。
准看護師である前に私も一人の心臓と精神を患っている患者なのだ。
その私でさえも医療を提供される際、そう採血の一つにしてもやはり思う事は一つである。
叶う事ならば採血の上手い看護師に針を刺して貰いたい。
『あー腕が太い癖に血管は細いですからね。いいですよ、痛くないから何回でも大丈夫ですよ~』
毎度の事ながら採血の順番が来ると決まって笑いながらそう言ってしまう自分がいる。
痛いのが、また看護師だからこそ分かってしまうもの。
そう、それは血管の走行。
暇な時に何故か自分自身の腕の血管をつい何とはなく触ってしまう癖。
だからこそわかってしまう血管の向きとこれより刺すだろう針の行く先とその角度。
また針を刺す瞬間に皮膚を軽く引かずに刺せばである。
針と一緒にたるんとなった皮膚が針と一緒にきゅっと引き込まれる事により生じる引き攣れる様な痛み。
はあ、これ絶対に血管の中には入らない。
でも細かく言えばきっと刺し手のプレッシャーとなり更に採血はし難いだろう。
だからと言って何回も針を刺され尚且つ痛いのは嫌だ。
万が一神経に刺されば数日は痛みが残るからと言って……。
そんな場面で明らかに新人看護師ではなくベテランの看護師だとわかれば、然も一回で採血が痛くもなく終わればその信頼度は爆上がりである。
次も出来ればこの看護師さんに刺して貰いたい……からの看護をして貰いたい。
そう思うのは誰しも同じものなのだと私は思う。
そしてこの透析センターの患者さんも然り。
新人の、なんちゃってリーダーを始めたばかりの私ではなく、ドンである藤沢さんを信頼してしまうのは当然の事なのである。
それに関して私は別に凹んではいない。
何故なら自分でも仕事が満足に出来てはいないと自覚をしているからである。
中にはそれでもこんな私を心配し優しく声を掛けてくれる患者さんの存在が、このささくれ立った心にどれだけ癒しを与えてくれた事だろう。
それなのに私はその恩返しも出来ないままに病院を何も言わずに去ってしまった事を今でも時々後悔している。
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