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第五章  じわじわと

4  相談……したいのに出来ない

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 生す事全てにマニュアルが存在しない。

 書類や物の位置がわからないのも問題だが、リーダー業務を記載されているだろうマニュアルの存在が透析センターに存在していない事が本当にまた切実に問題だったのである。
 
 そうしてほぼほぼ……と言うかまあ本当にリーダーに係るもの全てへ該当した。

 リーダー初日に看護部長の教えてくれたものは浅く広い説明。
 つまりはリーダーの一日の仕事の流れの様なモノだけである。
 その説明に細部に渡り細かなものはなく、当然私は狼の群れへ一人ぽつんと放り出されてしまった丸々と肥え太る美味しそうな子豚?

 お豚さんは何とか狼に食べられない様に必死に逃げる。

 そう私も必死である。
 しかし何もわからずに手探りでの仕事は時間を思った以上に要すのにも拘らずその仕事量は捗らない。

 いやいや一向に減る様子は――――ない。
 本当に、仕事が増える事はあったとしても片付いていく量は実際に少ないのである。
 
 幾ら慣れない透析だと言えどもである。
 これまでの病院でリーダー業務は普通にこなしていたし当然夜間の外来当直の場合は基本Dr一名と看護師一名。
 あらゆる事がこなせなければ出来ない仕事でもある。

 普通に『風邪を引いたから』……で来られる患者さんもいれば思わぬ急患が来院される場合もある。
 その何れも基本一人で看護師は対応しなければいけない。
 そして私もそれらを何年も行ってきた実績があった。


 だがそんな自分自身が特別有能な看護師とは思っていないし思わない。

 きっと良くて中くらい……?

 多分色々経験したからこそ、それらをなしえたのだろう。
 なのにここでは何も出来ない、役に立ちたくても立ててはいないのが現実なのである。
 
 そして焦ってはいけない。
 焦れば焦る程に冷静さを欠け、結果仕事へミスを生じてしまう可能性がある。

 ではもっと今以上に頑張らなければ!!

 今は仕事に溺れそうになっていたとしてもだ。
 今以上に頑張って仕事へ取り組み少し時間は掛かるかもしれないけれども、仕事さえ覚えられればきっと無事にこの困難を乗り越えられる。
 
 ほら、何と言っても山は大きい程その登り甲斐はあると言うじゃない。
 
 そう言う私の趣味は登山じゃあない。
 特に趣味と言うものではないけれど、敢えて言うならば読書と昼寝……かな。
 そうこれは物のたとえ……としてだよ。


 そして今の私はきっと山の麓でおたおたしている新人の、よくTVのニュースに映っているなんちゃって登山者だろう。

 だからそこからのレベルアップを図る為、マニュアルがなくてわからなければリーダーを経験している誰かへ訊けばいい。

 そう舵を切れば、無事に滞りなく業務を行う為にも私は視線の先にいた人物の許へと足早にと向かっていたのである。
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