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第四章 新たな出会いと別れ
1 新たな出会い
しおりを挟む「鷲見山と言います。これから宜しくお願いします」
5月の終わり新たに赴任したのは九州から半年の契約と言う事で京都へやってきた、34歳で五年の透析経験を持つ元気はつらつと言った感じの派遣Nsだった。
土山さんが入職してからも私達は田中さんの様にリーダー業務へ全く関わる事はない。
そんな中Bチーム内の勤務環境を整えようと彼女と二人で試行錯誤し、鷲見山さんが入る頃には漸くフロアで患者を受け持つスタッフ全員が、きちんと契約通りに休憩が取れるようになってきた。
とは言えそれまでが異常だっただけ。
またNsの仕事内容も見直し……とは言え何度も言うがリーダー業務以外のである。
月・水・金曜日は3クールまで透析があるのだが、火・木・土曜日は2クール迄。
然も2クール目の患者さんは10名足らずである。
従って透析を管理するのは基本Ns1名とME1名のみ。
残りのスタッフはベッドメーキングは勿論センター内の掃除や在庫確認とリネン交換を行っていた。
私が赴任した頃はこの火・木・土曜日の午後の仕事の内容が分かりにくく覚えるまでに時間を要したのだが、少し考え方を整理し今では誰でもが分かりやすく仕事が出来る様になってよかったと思っている。
また鷲見山さんのプリセプターになったのは土山さんだった。
だから当然彼女達は二人一組で行動をしていた。
私と土山さんにはなかったプリセプター制度。
良かったと思う反面、私にもそうして欲しかったとほんの少し……いやかなり羨ましく思った。
何故なら鷲見山さんは透析看護の経験が五年のNsに比べて私は……たった一年半である。
一人で勉強するにも限界はある訳で、今まではなにくれと土山さんを頼る事も出来たけれどもだ。
プリセプター教育中は流石に何度も聞く事は出来ない。
とは言えここでは訊きたいと思う人が余りにも少な過ぎる。
まあ鷲見山さんもベテランだし、そんなに教育の時間は掛からないだろう。
実際私がまだ行えない穿刺も彼女は問題なく行っているのだ。
ほんと、私こそがプリセプターが必要なのだと犇々と感じ入ってしまう。
それにしても感じのいい人が入って本当に良かったと思った。
天真爛漫で暗かったフロアー内に活気が少しずつ満ちていく。
これで少しは重苦しい雰囲気も変えられるかも……とこの時は信じて疑わなかった。
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