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第三章 疑問
7 疑問 Ⅶ
しおりを挟む透析時に輸血を行う主な理由は腎性貧血の維持治療として行われる事が多い。
また透析中に輸血を行う理由は透析回路に装着されているダイアライザー(人工腎臓として体内にあるだろう腎臓の代わりに身体の中にある毒素や老廃物を除去してくれる濾過器)を通す事で、X線照射により血球が破壊され輸血バッグ内が高カリウム状態である為、電解質の補正を行われてから再び体内へと戻していくからである。
簡単に言えば透析で輸血される血液の中でいらない成分を排除し、必要な成分を身体の中へ取り込むと言う事である。
輸血パック(RCC)を持ち帰った私は取り敢えず患者さんの血液型と輸血パックが同じものであるか様々なチェック項目を複数のスタッフで確認するのだと思っていた。
何と言っても輸血は慎重に行わねばいけない処置の一つでもあるのだ。
勿論輸血を受ける患者さんにも……である。
「ああ、貰ってきたら自分で確認して行えばいいよ」
はい?
まさかのシングルチェックですか?
いやいや今のは私の聞き間違い……ですよね?
そう言って朗らかに笑って去っていく古川さんをむんずと捕まえれば、半ば強引にダブルで輸血パックの確認を行った。
それから私は急いで前回の輸血のカルテを探し出す。
過去に働いていた病院で何度も輸血を行った事はある。
勿論事故は起こしてはいない。
でもだからと言って決して慣れてはいけない。
そう事故は何時でも起こり得るもの。
第一この病院での輸血は今回が初めてなのだ。
輸血に際しての管理は理解しているものの、やはり個々の病院によって少しずつルールと言うものが違う。
また前回の輸血で何のトラブルや副作用がなかったのかもちゃんと把握をしておきたい。
ただそれだけだったのに何故なのだろう。
探し出した前回の記録ではあり得ないくらいに特記事項欄が真っ白だったのである。
普通はバイタルや副反応等管理している事を記載していくのだから、文字ばかりで真っ黒とまでは言わないけれどもそれなりにぎっしりと細かく書かれている筈。
そう、看護記録とは患者さんの状態を記録する為でもあるが同時にその時間の自分の行動を記録する事で己が自身の身を護る為にもなるのだ。
なのに開始と終了のバイタルの記載もなければ、透析中の輸血管理のバイタルは通常の一時間毎。
また副反応や患者さんの状態すらも記載がない。
そして透析は既に始まっている。
輸血を始めて成分を除去し無事に体内へ帰すまでに時間は限られている。
まごまごしている時間はない!!
私は急いで詰め所へと行き看護マニュアルを、輸血の項目を探した。
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