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第二章 悪夢への分岐点?
9 逃亡若しくは脱出ですか?
しおりを挟む「はい?」
「派遣ではなくおまけに常勤……」
一体何が言いたいのだろうか。
入職してひと月が経つ頃に私へ疑問の言葉を投げかけた田中さんは静かにN病院を退職した。
私は退職するほんの少し前まで田中さんは常勤だとばかり思っていた。
彼女は真面目で何時も淡々と仕事をこなす女性。
私語なんて滅多になく、手が空いていれば詰所へ戻りリーダーの仕事を進んで行ってもいた。
物静かで卒なく仕事を行う――――ほぼほぼこのひと月の間仕事以外に接点はなく親しく話す機会もなかったのだが、彼女が退職してから少しずつだがポロポロと漏れ聞こえてきたのは半年契約の派遣Nsで、然も今回は契約満了ではなく残り三ヶ月を残し行き成り契約を打ち切ったらしい。
当然契約の打ち切りを申し出たのは田中さん。
理由は両親が倒れた――――と言うのが表向きなのだがしかし真実はN病院ではもう働きたくはないと言うものだった。
大人しい感じの女性だったと思ったのに随分と思い切った行動をするものだと、この時の私は呑気にもそう思っていた。
だが彼女が辞める少し前に問われた言葉が……。
「どうしてここに? おまけに常勤で?」
ほぼほぼ感情を表に出さない……これが世に言われる能面なのかと思っていたのだが、この時ばかりは私が常勤で入職した事に驚愕していたのが印象に残っている。
一体何故そんなに驚く必要があるのだろうと思った。
私は今まで通り本業は何時も常勤が当然だった。
だからN病院の際も常勤として面接を受けたのである。
しかし私には当然の事でもこのN病院にしてみればそれは珍しい事なのだと、この時の私はまだ何も気づいてはいない。
ファンタジーで譬えるならば田中さんは獰猛な魔獣が棲む魔窟へ深入りし、抜け出せなくなる前に上手く脱出しただけだと本当の意味で理解したのは、愚かにも私がその魔窟へ深入りし過ぎた事により魔獣に喰われ……鬱を発症して数年後の事だったのである。
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参考資料
ギリシャ神話
プロメテウス
ヘラクレス
オルフェウス
パンドラ
オデュッセウス
イリアス
オデュッセイア
海精:ネーレーイス/ネーレーイデス(複数) Nereis, Nereides
水精:ナーイアス/ナーイアデス(複数) Naias, Naiades[1]
木精:ドリュアス/ドリュアデス(複数) Dryas, Dryades[1]
山精:オレイアス/オレイアデス(複数) Oread, Oreades
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