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第二章 悪夢への分岐点?
8 どうしてここへ来たの?
しおりを挟む今の私に出来る事――――。
そして何度でも聞いて確認をしよう。
先ずは患者さんのバイタルを測定しながら機械へ入力している数字に間違いはないのかと、再計算をしつつカルテの数字と機械の数字を確認していく。
それから受け持った患者さんの情報収集をし、血圧の値と前回のカルテの内容を見比べ、除水設定が多いかもと思えばその都度田中さんへ確認をした。
またこのN病院では前職の様な安定透析の様に血圧が下がれば血液中の水分のみを除水するECUM若しくは即時終了は余程の事がなければしない。
そこは個々の患者さんに合わせた血圧を測定し、適宜その日の担当の匙加減……まあぶっちゃけそれが真実だろう。
血圧の状態を見てカフェインやリズミックと言う血圧を上昇させる薬の服用を患者さんへ与薬していくのである。
そう、半年のブランクとまだまだ透析経験の浅い私の手の中に五人の患者さんの命がある!?
この現実に不安がないなんて絶対に言えない。
出来る事ならば『私にはまだ無理なのだ』と声を大にして叫びたいくらいだった。
前職通りの安定透析ならば未だしもである。
血圧の変動によって機械……コンソールの入力の変更や内服の与薬、その他様々な事が不慣れな、仕事始めの初日から重過ぎる重石を負わされるなんて思ってもみなかったのである。
そうして時間が流れ一応無事に透析は終了し、1クール目の患者さんは帰宅していく。
その間に看護部長がやって来れば私を連れて外来患者さんへ一人一人紹介をしてくれた。
私は紹介される度に挨拶をしていったのだが……本当は看護部長に言いたかった。
約束と違うでしょ!!
しかし患者さんの前でそんな事が言える筈もなく、1クール目の患者さんが終わる前には既にエレベーター前の待合所には2クール目の患者さんが待っているのだ。
私達は透析が終了すれば回路に残っている患者さんの血液を返血しなければいけない。
返血し終えれば針を抜き、止血の確認を終え患者さんがベッドを後にしていく毎にベッドメーキングを行っていく。
本当に息を吐く間もなく2クール目の患者さんが入室すれば手洗いを行い穿刺が始まる。
怒涛の様に、あっと言う間に時間は過ぎていく。
そうして17時になる前だった。
私の教育係と言うのだろうか。
それとも……?
ただ喜怒哀楽の少ない田中さんがぼそりと呟いたのである。
「どうしてここへ来たですか?」
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