【完結】希望 ~差し伸べられたのは貴方の魂の光でした

Hinaki

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第二章  悪夢への分岐点?

7  嘘でしょ⁉

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「じゃあこっちからここまでの患者さんの受け持ちをして下さい」
「は、はい……で、でも私前職は本当に安定透析だったので、薬を与薬したり透析中の管理もその……」

 はっきり言って怖いという感情しかなかった。
 何故なら話は今より約一時間前へと戻る。


 8時25分に申し送りと言うか、当日のリーダーNsが淡々と本日の予定を告げていく。
 周りの人間はただそれを静かにメモをするだけ。

 そうして30分になれば手洗いをし一斉に穿刺を行っていく。
 体重測定は臨床工学技士の男の子達がそれまでに済ませてくれていたし、患者さんは各々自分のベッドへ行けば透析の準備をして待っていた。

 一々前職と比べてはいけないと思いつつも透析前の情報収集はなく、あくまでも穿刺をすればチューブを繋げ回路を回す時には増えた体重をDWへ近づける為に機械へ入力すればだ。

 余程の問題がなければそのまま透析を開始していく。

 約半年のブランクを持ち、また前職とは微妙に違う機械操作と回路の取り扱いに慣れる訳もなく、穿刺をするスタッフの介助をぎこちなく、でも数をこなせば少しずつではあるが『あぁこうだったよね』と穿刺の介助を思い出していく。


 因みに前職では穿刺は全てDrが行っていた。
 Nsである私や臨床工学技士の子達は穿刺をせず全てDrが穿刺を行いその後に私達がチューブへ接続し回路を回していく――――と言うものだった。

 しかしこのN病院ではDrは余程の事がなければ穿刺は行わない。
 穿刺からチューブへ繋げて回路を回し透析を開始すると言う一連の操作は全てNsと臨床工学技士が行っているのである。

 当然の事だが穿刺の件は面接時に看護部長へ話をしていたのだ。

 何れ、そう何れ慣れた頃……ちゃんと穿刺に関して理解が出来れば追々私も穿刺をしていこうと、透析をより学ぶ為にも穿刺が出来る様にもなりたいと思ってもいた。
 シャントの事も勉強して、だから患者さんを初日から受け持つ事もないだろうと思っていたのだ。

 そう、看護部長が教育にも力を入れているし心配しなくてもいいと言ってくれた――――筈⁉


「私の時も初日からでした。だから今日は5人の患者さんを受け持って下さい。わからなければ聞いて下さい。では――――」

 そう言って田中と名乗るNsは淡々と手短に説明を済ませれば、後は自分の受け持ちの患者さんの方へと戻っていく。
 
 


 一瞬だけ私はその場で呆けはしたもののそこはやはり仕事なのだ。
 頭を切り替え、わからない中で……本音を言えばめっちゃ不安でしかない!!

 私の管理と匙加減一つで患者さんの命に係わると言っても過言ではないだろう。
 だから兎に角わからない事は何でも聞いていくしかない。

 内心不安で一杯になりながらも私は患者さんの許へと行くのであった。
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