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第二章  悪夢への分岐点?

5  採用

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『今日はどうもありがとう御座いました。では失礼致します』

 受付前でそう看護部長へ挨拶すれば直ぐ背後にある扉を開き外へと出る。
 そうして階段を下りれば目の前には青空駐輪場。
 私はそこに原付を駐輪させて貰っていた。
 だからそのまま自分の原付の許へと戻り、鍵を差し込みシートを上げヘルメットを取り出そうとした時だった。

 ピロンピロン

 スマホが鳴り通話へと切り替える。

『もしもし』
『あ、今日はお疲れ様でした。人材バンクの山田ですが今大丈夫ですか?』
『はい、今面接が終わって駐輪場にいるんですよ』
『ああそうですか』
『はい』

 なんてジャストタイミングな連絡なのだろう。
 もしかして何処かで覗いていませんか……等と呑気に思いつつ私は何も考えずに返事をしていた。

『今ですね、N病院さんより連絡がありまして桃園さん採用ですよ』
『は? い、いや今面接が終わったとこで――――』

 速攻じゃん。
 こんなのってアリ?
 いやまあない事もない……か。

 バイトの時はその場で採用だった事もあるし……。

 その後給料面や勤務体制と私の身体が大きいのもあり、後日白衣のサイズを測ってから特注で用意をして貰う事約一ヶ月後、私はN病院へ入社したのである。


 今にして思えば何故この時にもっと真剣に考えなかったのだろうかと思った。
 しかし元来私は鬱を発症するまでの性格……まあこれは今もなのかもしれない。
 
 そう私はかなりの天然且つ楽天家だったりする。

 自分自身ではそこまで……と思ってはいない。
 でも周りの人間が皆口を揃えて言うのである。

『桃ちゃんは天然だよね』
『楽天家と言うかのんびり屋だよねー』

 折角採用してくれたのである。
 断ったら悪いかも……何て思わなければよかったと、一年後の私が叫んでいるとも知らずにこの時の私は、最初の面接で採用された事を素直に喜び返事は勿論『OKです』と答えてしまったのである。
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