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第二章 悪夢への分岐点?
1 面接
しおりを挟む「――――私はまだまだ透析の経験は浅いです。それも前職は1クールだけの安定透析でした。出来ればこちらで透析看護を学ばせて頂ければと思います」
「そうですね、こちらではきちんと各々に見合った教育も行っているのでそこは問題ないでしょう」
これは今から丁度一年前……人材バンクより紹介をして貰い、N病院の看護部長との面接内容である。
私の履歴書を見て小部屋で面接をし、その中でも私の経験の浅さと前職を退職してから新居への引っ越し等をしていた半年間のブランクがある事、また透析看護を短期間しかしていなかったとは言えだ。
その内容は実にお飯事状態で、参考書やネットに研修で見聞きする内容とは程遠い内容だったのである。
抑々何故私が透析看護へ舵を切ったのかと言えばである。
私は免許を取得して十数年、本業と副業を両立させたまでは良かったのかもしれない。
最初は順風満帆だった。
だが年数が経過していく中寝る間を惜しんでの勤務に偶の休日に当時彼氏だった夫とのデートからの夜勤入り。
夜勤からの夜勤明けの日勤。
気が付けばほぼほぼ慢性的な睡眠不足が続き何時しか身体より悲鳴を上げていた。
でも私は健康で和解し元気だし……と自らを言い聞かせながら働き続けていた。
しかし幾ら健康でも休息を十分に取らなければガタがきてしまうのも時間の問題だった。
私の場合はそれが38歳の三月のとある日だった。
その数ヶ月前より人手不足が本業と副業と被りに被り、本業ではひと月に日勤がたったの三日。
それ以外は公休と……夜勤のみ。
一方ひと月四回だけ入っていた副業の方も師長に頼まれ六回までに増やしていたのだ。
それも入院受けをした日には三時間越えの残業込みで……。
そうして当然の様にその日を迎えたのは偶々準夜勤の日だった。
だがその日に限って朝から体調が、背中の中心と言わず全体が何とも重怠く胃の辺りも痛い。
疲れが溜まっているのだろう。
時間までゆっくり休めば回復するだろう。
それに遅くとも15時までに家を出れば問題はない。
普通に考えれば明らかに胸部、心臓疾患の症状だったのに、何故かこの時の私は健康で心臓には全く問題ないと謎の自信故に愚かにも全く気付かなかったのである。
でも時間は過ぎれども状態は一向に良くはならない。
それもその筈。
適切な処置をしなければいけないのにしてはいないのだ。
今にして思えば随分と危険な事をしていると思う。
そうして出勤の時間がきて起き上がろうとしたのだが、これまた何故かすっと起き上がれない。
ここへきて流石に少し焦り始めるけれど、でも夜勤の看護師は一人だけ。
出勤しない訳にはいかない。
でも身体が思う様に動かせない。
思い悩んだ末に出した答えは遅刻――――だった。
いやいやただ単に遅刻をする訳ではない。
近医で受診し薬を処方して貰ってからの出勤をする心算で、それも規模の大きな病院への受診は時間が掛かる。
だからそこは小さな個人の医院でさっくりと診察をして貰えば薬を片手に出勤をしようと、即病棟へ連絡し師長に電話越しに頭を下げながら詫びを入れていた。
原付に乗り、近医へ受診をする為に向かう。
医院へ到着すればそこは普通に問診からの聴診、心電図にレントゲンからの採血をして告げられた病名が――――。
『狭心症の発作を起こしていますね。ほら、心電図のここに陰性T波が……』
はい?
狭心症⁉
何それって心臓って――――!!
考えれば考える程、また自覚すれば自覚する程に胸が痛いけれども――――。
『今から準夜……仕事へ行ってもいいです……』
『死ぬ気ですか? 直ぐに処方する薬とテープも張ってゆっくり休んで下さい。何かあれば救急車を呼んで下さい』
マジか……。
どうしよう夜勤。
変わりがいないのにどうしたらいい?
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