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第一章 鬱と診断されて安堵する精神状態
14 新たなる病院
しおりを挟むその日は晴れていたと思う……ってウロだけれど。
ただ私にとってこの日は特別な日となった。
だから晴れでいいのだと思う事にした。
何時もの様に夫の車で母と三人乗車すれば向かう先は京都市内だが北部にある静かで閑静な……はっきり言って田舎。
確かに重要文化財なんかも病院のほんの近くにあったりはする。
京都市内は東西に渡る大路……丸太町通りから一筋毎に上に越える事に温度が1~2度くらいずつ下がっていく。
因みに私が住んでいたのは市内でも南にある伏見区だ。
お酒の蔵がある場所よりも西に在り、気候も北に比べれば暖かい。
それでも2月はまだまだ春には少し遠くそして寒く、底冷えのする中私達はその寒さが増す方へと向かって行った。
今出川から北大路を超えた辺りからは日によって雪が残っていたり道路が凍っていたりする時も多々ある。
だが目的地である病院は更に北へ、人家も少ない野生動物が出てきても可笑しくない場所にひっそりと、鬱葱とした木々……まあ季節的には葉っぱよりも雪がこんもりと積もっていたと思う。
何とか無事に到着した私と母は先に車より降り受付へと向かう。
本当に静かで空気が澄んでおり、何となく落ち着ける様な場所だった。
予約診療の為待っている患者さんは少なく、広い待合に閑散とした感じの、だからと言って暗過ぎずまた明る過ぎない照明だ。
そうして暫く待てば名前を呼ばれ入室する直前になって私は胸がどきどきし始めた。
またSクリニックと同様に何も話を聞いてくれなかったら。
薬だけ処方されて追い出されたり突き放される言葉を言われたらどうしよう。
今までどんな事を言われても笑顔で対応出来た筈なのにあの1月2日の暴言から、胸に突き刺さる様な言葉に対応出来ない自分が存在している。
心の奥で大きな身体なのに必死に最大限身体を縮めれば蹲り声を殺したかの様に泣いている。
また時には悲鳴の様な奇声を上げている自分も存在していたのだ。
そんな自分が私へと警鐘を鳴らしてくる。
この扉を本当に開けてもいいの?
扉の前で何度も深呼吸を繰り返す。
母はそんな私を静かに見守っていたと思う。
だが夫は違った。
「おい開けるぞ」
私の心の準備もまだ整わないと言うのに夫はその扉をしっかりと開けたのだった。
このスカタン!!
ドアホ!!
今ならば文句の一つも言えただろうがまたしても私は何も言えず、おどおどとした面持ちとその心のまま診察室の中へと入って行った。
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