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第一章
13 突き刺さる視線
しおりを挟む今や第一騎士団の鍛錬場の空気は最悪だ。
勿論本来の目的である模擬戦は順調に行われている。
またそれぞれの推しである騎士達へ送る黄色い声援も健在だよ。
では何が最悪かって?
それはジークヴァルト様の、多分私へ向ける胸焼けする様なくらい甘い視線と笑顔が原因だと私は思う。
当然ジークヴァルト様を推す女性の皆様にしてみれば面白くはないよね。
妙齢な、皆が認めるくらいの美しいご令嬢とかだったら諦めもつくと思う。
知らんけれどね。
居並ぶご令嬢やご婦人方の視線が物凄く痛い。
それもそうよね。
騎士団の中でもトップクラスの腕と人気を誇る(先程知ったばかり)なジークヴァルト様が気にする相手と言うのがお子様なのだもの。
面白くないのと同時に皆様の心の中である疑惑も芽生えるでしょうね。
えぇ勿論私も色々と突っ込みどころが満載だし、とは言え現状ジークヴァルト様とは距離も置きたいし可能ならばこれ以上近づいて欲しくはない。
でも流石にジークヴァルト様ってロリコンなの?
とは誰も問い掛けないし寧ろ問い掛けられないでしょ。
「あらそんな事はなくてよ」
いた!?
ここに猛者ならぬ勇者が存在していた!!
「まぁルートも?実は私もよ。当然テアもでしょ?」
「えぇまぁそれは気にならないと言えば嘘になりますね。それにエル様命と言う方がこれ以上増えられるのも正直に申しまして大変ですわ。まさに傾国の美女ならぬお元気な9歳児……と言ったところでしょうか」
ひ、酷いテア!!
そ、それは傾国の美女とは自分でも思わないわよ。
そこは烏滸がましい事くらい自覚はあるわ。
でもお元気な9歳児って、まぁ野猿令嬢と言われないだけましなのかも。
最初こそは怖~いお姉様やおば様の底意地悪いコソコソ話が聞こえていたのだけれどね。
当然そこは私を貶める言葉がありましたよ。
でも私がキルヒホフ家の娘だとわかればだ。
彼女達の変貌ぶりは明らかだった。
まさかここで両陛下や四人の王子様達から愛されている事に感謝する日がこようとは思わなかった。
然も総騎士団団長であり第四王子のラインお兄様が私達と対面にあるご自身のお席より声高に私の名を発せられたのと同時に満面の笑顔……って、あれは絶対に心の中は笑っていらっしゃらないわね。
勿論私へ視線を向けられた時は何時ものラインお兄様の優しい笑顔である事は言うまでもない。
お兄様が牽制して下さったお陰で今はとても平和な環境で観戦をしている。
持つべき者は金と権力?
齢9歳でその意味を体験するとは思わなかった。
うん、後でラインお兄様へお礼をいいに行かなくてばね。
ここまでは一応比較的平和だった。
模擬戦もいよいよ決勝。
決勝戦はジークヴァルト様と――――。
会いたくない人が鍛錬場へと、颯爽と現れた瞬間場内は最大級に大盛り上がりとなる。
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