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第一章
12 兄の親友?
しおりを挟む「エル何処を見ていらっしゃるの。ほらあの方がラウレンツ様とお兄様のテオフィル様よ!!」
私の左隣で件のラウレンツ様を見て大興奮しているのは親友のアンネリース・クリスタ・ローレンツ。
マーラー公爵家のご令嬢であり私と同じ9歳。
ふわりと柔らかな亜麻色の髪に愛らしいくりくりっとしたヘーゼルの瞳を持つとても可愛らしい女の子。
このゆるふわな見た目とは違い性格は私の右隣にいるテアと同じくしっかり者の姉御肌って感じかな。
趣味は大人を掌で思うままに転がす……事?
きっとアンネが大人になれば蠱惑的な美女となって世の男性を翻弄させるかもね。
でも今は騎士活道を爆走中で、推しの騎士様に翻弄させられているのかもしれない。
「確かにお兄様のテオフィル様も素敵だけれど、もうあの御方には相愛のご婚約者がいらっしゃるのよね。その点ラウレンツ様はまだフリー。機会があればお茶をして頂けないかしら」
アンネの左隣にいるのが同じく親友のゲルトルート・ハイデマリー・アスペルマイヤー。
グミュール侯爵家のご令嬢でこちらも私達と同じく9歳よ。
漆黒で艶やかな髪に青灰色の瞳を持つ好奇心旺盛の美少女。
ルートにあざとさはないけれど、その代わり僅か9歳にして神秘的な美しさを持つ美少女だったりする。
ただその神秘的な美少女も口を開けばごく普通の女の子なのよね。
「それでエルのお目当てはどなたなの?」
「お目当てって抑々私は騎士様に興味がないと言うか知り合いもいな……」
「ほらエル様、テオフィル様のお相手はシュターデン公爵様ですよ」
「「え、エルってばジークヴァルト様推しなのぉ⁉」」
「ち、違うってば⁉ジークヴァルト様は推しではなくて、そ、その……」
何て説明すればいい。
後三ヶ月先に王命で婚約する相手だけれども現在全力で回避を試みてます……とか言っちゃう?
いやいやそれは流石に不味いでしょ。
三人にすれば何未来を語っているって不審がられると言うか、この三人の事だから逆に気が済むまで弄り倒されるかもしれない。
いや100%弄り決定だわ。
悪意があれば怒る事も出来ると思う。
でもこの三人は純粋に面白い事を楽しんでいるから質が悪い。
とは言え私は三人の友が大好きなの。
元は幼友達のアンネとルート。
そこへお姉さんのテアと皆で意気投合しちゃったのよね。
テア曰く私が深窓の淑女になるまでは侍女として扱って欲しいと、アンネとルートにも真剣にお願いしていたのだけれどね。
そう言われて引かないのが二人だとも言える。
だから妥協案として常は私の侍女としていればいいけれど、四人で遊ぶ時は私の義姉として、また親友として過ごす事に決まったのである。
私にしてみれば少し複雑だけれどよ。
皆がそれで幸せならいいかな。
「ねぇエルはどうなの。ジークヴァルト様って競争率が物凄く高いので有名なのよ」
「いや私は別に推してはいないよ。それにジークヴァルト様はアルお兄様の親友ってだけで私とは関係ないよ」
「「そうなの」」
いや何故そこで残念そうな表情になるのかな。
「ですが先日もアルフォンス様を口実にエル様を訪ねて来られ――――⁉」
「テアそれ以上何も言わないで!!」
私は意味あり気に暴露しようとするテアの口を咄嗟に塞ぐ。
「ねぇそれってどういう……」
そこで黄色い歓声が大音響となって鍛錬場へ響き渡る。
「勝負がつきましてよ……って、えっ?」
必死に一人応援していたアンネが私とテアの様子を見て呆れた口調で言いかけた時である。
「ちょ、ちょっと、ねぇ本当にエルとジークヴァルト様って何も関係がないの⁉」
「な、ないと言いたい」
ならどうして……とアンネの言う通りカルク家のテオフィル様へ勝利をしたジークヴァルト様は私の方?
自意識過剰でなければだ。
朗らかに微笑むジークヴァルト様と何故か私が視線を絡ませて……いる?
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