6 / 34
第一章
2 鬼教官と言う名の私の侍女
しおりを挟む私はバルコニーより身を投げたのだぁぁぁあああああああああ⁉
然も楽しそうにダンスを踊る様にステップを踏みながら、でも実際は心の中で血の涙を流していた私はバルコニーからダイブした事をしっかりと思い出してしまった。
とは言えダイブした後は何も覚えてはいない……と言うかだ。
そこは普通に意識を消失したのか先か、はたまた何もわからないまま地面と仲良くなってしまったって事は⁉
で、では今の私はもう既に死んで……いる?
ほら三階のバルコニーからしっかりと身を投げたのだもの。
普通に死んでしまったとしても当然だし、いや寧ろ助かっていたのであれば今頃全身包帯だらけのミイラ女と化せばよ。
指一本だけではなく恐らく言葉も真面に発せられないだろう筈なのにどうしてなの⁉
不思議な事に何処にも包帯の巻いている場所はおろか包帯らしきものの存在すらも認められないだけでなく、何処も痛みはなく身体は至って健康そのものって感じで異常は全く……ない?
いやいや少し落ち着こうか私。
痛みも何もないって事はやはり私はもう既に死んでいる案件なのでは⁉
もしかして私は幽霊にでもなったの?
まあ何れにせよそれを選んだのは他でもない私自身なのだけれど。
出来ればそこは浮遊霊ではなくちゃんと成仏したかったわね。
そんな事を考えながら姿見の前で自身の姿を見つめていた。
うん、これは間違いようもなく胸だけでなく身体は細くも小さなお子様体型。
ほらこの手もまるで縮んだ様に小さく可愛いらしいサイズとなっている。
まるで物語の様に大人から子供へ若返……⁉
暢気にも笑みを浮かべながらお馬鹿な事を考えていたまさにその時だった。
「何時までそうしておられるのですかエルお嬢様。今日は王宮へ、両陛下とのお茶会の日ですからちゃんとして下さいね」
「お茶……会?」
「そうですよ。何時もの野生児野猿令嬢様は綺麗にお隠しとなり、深窓のご令嬢の仮面をきっちりと、ええ絶対に1㎜も仮面を剥がしてはいけませんよ!!」
ちょ、ちょっと待って。
「お・へ・ん・じ・は!!」
背景がドロドロの、物凄く真っ黒なオーラを纏ったテアが余りにも久しぶり過ぎて半端なく怖い⁉
だから私は深く考える間もなくその場の雰囲気と勢いのまま――――。
「い、イエス・マム!!」
「はい、良く出来ました。ではこちらへきて支度をして貰いましょうねお嬢様」
テアの満面の笑みが物凄く怖い⁉
そしてこれは絶対に有無を言わせない笑顔だわ!!
これだけは忘れようたって忘れられない。
思いっ切り調教され続けたテアの恐ろしい一面。
何を隠そうって何も隠しはしない。
私は少しだけ普通の令嬢とは違っていた。
皆が甘やかしてくれるのも一理あると思う。
でもそれに便乗した私はお転婆を通り越しじゃじゃ馬街道まっしぐらとなればよ。
当時そんな私に手を焼いていた両親はある日一人の少女を侯爵家の養女として迎え入れた。
アショフ男爵家令嬢テア・エデルガルト・フローン。
私を淑女へと矯正するべくやってきた私の専従侍女!!
たった三歳しか違わないのに初めて会ったテアは12歳にして既に完璧な淑女。
ただご実家は裕福だけれども男爵家の次女であるテアの将来は決して明るいものではない。
そこでお父様とお母様は行く行くは養女としてテアを我が侯爵家へ縁付け、侯爵令嬢として嫁に出す事を条件に最初は私の話し相手と言う名の師匠として我が家へやってきたのだがしかし――――。
「閣下、ここは是が非とも義姉ではなくお嬢様の侍女として、一からお嬢様と向かい合いたいと思います」
何処をどう見ても令嬢らしくなく男の子の様に走り回ればだ。
初対面で顔に泥や葉っぱを付けては大口を開けて笑っている私を凝視したテアはそう宣ったのである。
勿論ここで私……いや両親にも拒否権と言うものは存在しない。
気付けばある意味テアは我が家で一番の権力を持ってしまった。
第一頭もキレっキレでその上お母様と同じくらいの素晴らしい淑女っぷりって一体どんな化け物なのよ。
ともあれ王妹であるお母様の一番のお気に入りとなったテアに最早怖いものは存在しない。
行く行くは養女にと言うお話もお母様によって既に養女扱いではなく実の娘となっているのだもん。
まぁそのテアのお陰で今の私は立派な淑女になったのだけれど……ってちょっと待って⁉
私とテアはまだ知り合ってそんなに時間は経過していない筈。
なのに立派な淑女って一体……。
深く考えようとすればする程また頭の中は霞みで一杯になる。
わからない事が多過ぎる。
そして納得の出来ない事も多い。
一体私はどうなっているのかしら。
完全に現状が把握出来ないままの私は鬼教官いやテアの指示通り数名の侍女達によって身支度を整え、混乱した頭を抱えたまま王城へ伺候した。
1
お気に入りに追加
264
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
居場所を奪われ続けた私はどこに行けばいいのでしょうか?
gacchi
恋愛
桃色の髪と赤い目を持って生まれたリゼットは、なぜか母親から嫌われている。
みっともない色だと叱られないように、五歳からは黒いカツラと目の色を隠す眼鏡をして、なるべく会わないようにして過ごしていた。
黒髪黒目は闇属性だと誤解され、そのせいで妹たちにも見下されていたが、母親に怒鳴られるよりはましだと思っていた。
十歳になった頃、三姉妹しかいない伯爵家を継ぐのは長女のリゼットだと父親から言われ、王都で勉強することになる。
家族から必要だと認められたいリゼットは領地を継ぐための仕事を覚え、伯爵令息のダミアンと婚約もしたのだが…。
奪われ続けても負けないリゼットを認めてくれる人が現れた一方で、奪うことしかしてこなかった者にはそれ相当の未来が待っていた。
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
【完結】前世の男運が最悪で婚約破棄をしたいのに、現れたのは王子様でした?
刺身
恋愛
⭐️完結!
読んで下さった皆様本当にありがとうございました😭🙏✨✨✨
私には前世の記憶がある。
前世では波乱万丈、苦労も多く、その理由は借金、酒、女とだらしのない元旦那の存在だった。
この異世界転生を優雅に謳歌するため、私の人生を狂わす恐れのある婚約は破棄したい。
なのに、婚約者は絵に描いたようにモテまくる金髪蒼眼の王子様。に加えて、やけに親切なミステリアスな仮面の青年も現れて。
互いに惹かれ合いながらも、底知れない呪いに絡み取られていく主人公たちの結末はーー……。
※エピソード整理ができてなくて、まったり進行で申し訳ないです。
そのうち書き直したいなと思っていたり。。
2章からは比較的事件?が勃発致します🙇♀️💦💦
※お目汚しで大変恐縮ではありますが、表紙やら挿絵、小ネタ的なモノをつけてます……。笑
落書きみたいなもので恐縮です。。苦手な方は薄目で閉じてくださいますと幸いです……。←
※一人称の練習も含んでいます。読みづらい、違和感などあれば教えて頂けますと大変参考になります。よろしくお願い致します。
※よく迷走しているので題名やらが謎にバッサリチョコチョコ変わったりする場合があります……滝汗
ご指摘、ご感想、ご意見など頂けましたら大変喜びます……(*´꒳`*)
どうぞよろしくお願い致します。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる