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終章

13  怒れるアナベル

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 アナベルは怒りで顔を真っ赤にし、その姿はもう般若と化したままラファエルの許へとズンズン近づいていく。
 一方ラファエルは少し身構えるも両腕は愛しいエヴァが健やかに眠っている為に防御等取れよう筈もない。
 5m程先では既にマックスは床のボロ雑巾と化し身動きが取れない状態である。
 しかしマックスは医師とは言えど今も現役の騎士。
 然も剣の腕はラファエルと同格の筈。

 アナベルは無言のままラファエルの前に着くとエヴァを素早く奪い取り、彼女を起こさない様に細心の注意を払って横抱きにする。

「このっっ!!」
「はぁ? そなた無礼にも――――!?」

 エヴァを起こさない様極力小さな声で以って、その癖ドスの利いた十分過ぎる程に低い声音で、アナベルはラファエルに向かって言い放つ。
 だがラファエルとてアナベルに言われたままでいい筈はない。
 エヴァには正式に愛を告白したのである。

 然も彼女は『』と了承してくれたのだ。

 恋人同士の遣り取りを侍女に一々文句を言われる必要等ない……筈だ。
 おまけに一国の王を相手に何と言った?

「何度でも言うわよ。この破廉恥けだもの王ってね!!」
「しょ、少々無礼ではないか。幾ら姫の侍女とは――――」

「ご自身の下半身をじっくりご覧になって頂きたいものですわ獣陛下!! そのお姿は実に言葉通りにしか見えませんからね。我が主、ライアーンの清廉な百合の姫君には絶対的に不似合いなものでしょう」

 清々しい程に軽蔑しきった視線でアナベルは、ラファエルの下半身へと視線を向けた。
 その視線はまるで汚物を見る様な軽蔑しきったものである。

 アナベルの視線に物思う所もありつつそっと自身の下半身を見れば――――っ!?

 服越しからでもしっかりとわかるくらい彼の昂ぶりは見事にその存在を主張していたのだ。
 恐らく、嫌間違いなくエヴァの甘い匂いがラファエルの雄である部分を呼び覚ませたのだろう。
 だがそんなラファエルに尚もアナベルは畳み掛ける様に、また何故か憐れむ様な口調で述べたのだ。


「陛下、お言葉ですが明日もう一度エヴァ様に先程の件をお確かめになった方が宜しいかと思われますよ」
「何をだ」

 あからさまに不快を示すラファエルに構わずアナベルは得意満面と言った具合に続けて二の句を告げる。

「エヴァ様は昔よりお休み前になると何でも『』と、それはもうお可愛らしい子供の様なお返事をなさいますの。ですので恐らく今回も……」

 エヴァは本心からラファエルへ恋をしてはいないのでは……?

 そう告げればアナベルはくすくすと嗤いながら男二人を放置する一方で宝物の様にエヴァを大切に抱き上げ、エヴァの寝室へと向かったのだった。
 そうして残された男達、少なくともその言葉を聞いた瞬間ラファエルの下半身はあっという間に元の姿へと戻ったのは言うまでもない。
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