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終章
12 夢からの現実
しおりを挟むこれは何?
少し胸がざわめくのは何かしら。
もしかしてこれは……そう最近不摂生ばかりしていたものだから、何か病の兆候なのでは……?
とくんとくん――――。
ざわめきと共にこの胸の動悸は何?
それから陛下のお身体に触れている所からじわじわと熱が私の身体へと伝わってくる。
でもそれは決して不快ではないの。
ただ昔国にいた頃お父様に抱かれている時のものとは全く違う感じ、だわ。
何故違う感じなのかって?
何て表現をすればいいのかはっきりとわからないの。
ただ陛下の腕の中は少し擽ったい様でいて、お父様の腕の中とはまた違った言意味で安心感があるの。
そうね、このままずっと安心して眠っ、て――――…。
「……エヴァ? エヴァンジェリン?」
ラファエルは腕の中の愛する乙女の身体より徐々に力が抜けていくの事に気付き、優しく呼びかけるが勿論返事はない。
耳を澄まし聞こえてくるのは規則だたしい甘やかで健やかな寝息。
今は既に深夜の二時を過ぎている。
本来ならばエヴァはもう就寝している時間なのである。
また正式な形で今回ラファエルへ十年ぶりに挨拶をし緊張した故なのか、エヴァは彼の腕の中でどうやら寝落ちしてしまったらしい。
熟睡するエヴァをラファエルはゆっくりと優しい動作で横抱きにした。
彼の腕にかかる重さはとても心地良い重さだった。
抱き抱える際に偶然エヴァの胸元へ近づいた瞬間彼女より甘く芳しい匂いが鼻腔より脳へと突き抜ければ、下半身へと血流が集結しそうになるのを彼は気力で以って何とか回避したのである。
だが一度身体が覚えてしまった匂いはほんの些細なものでも雄が持つ性のなせる業なのか、拾うまいと強く理性己を律しようとすればする程に、現実はエヴァの匂いを一つ残らず掻き集める様にして拾ってしまう。
その度に下半身はピクンピクンと素直過ぎる程に反応しようとする。
長らく恋をする事も、ましてやこんな風に身体が反応をする事すらなかったと言うのに……な。
身体は反応すれどもそれは今ではない。
深く今一度おのれを強く持とうとするラファエルの気持ちも知らず腕の中の眠り姫は、もう18歳と言うのにその寝顔はまだまだあどけなさが残っていた。
命を懸けてでも護りたい存在。
いや、絶対に何があろうとも護り抜き、アーロンを倒しそしてエヴァの自由を手に入れる!!
愛しい乙女へ誓う様にその額へそっと口づける。
「――――何時までふざけた真似をしているのです!!」
「アナベルか」
ラファエルは蕩けた表情で、愛し気にエヴァを見つめていた瞳のまま視線をアナベルへと向ければ――――!?
「ふっ、ふざけるなっっ!!」
「へ、陛下っ、もう限界です!!」
アナベルの怒髪天を貫く様な罵声とは正反対に哀れなくらいボロ雑巾と化しつつあるマックスの悲壮な叫び声が同時に発せられた。
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