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終章
9 会談 Ⅱ
しおりを挟む「エヴァ様っ!?」
「フィオっ、そ、それは――――っ!?」
エヴァは煌めくエメラルドグリーンの瞳でしっかりと目の前にいるラファエルを見据え静かに告げた。
その発言へ即座に反応したのは二人。
最初に感嘆の声?
悲鳴に近い声を発したのは言わずもがな脳筋令嬢兼侍女のアナベル。
対照的に情けない声を発したのはマックスである。
一方ラファエルはエヴァの言葉を静かに聞いていた。
「帰国をすれば私はきっと国内の有力貴族へと嫁がされるでしょう、えぇそれこそ最初から決められていた道だったのです。ただシャロンの件により紆余曲折はありましたが、このルガートへ嫁した当初も辛いと感じはしました。いいえあの頃はきっとそれすらもわからなかったでしょう」
「……エヴァンジェリン」
「とは申せこの離宮での生活は今にして思えばとても感慨深いものでしたわ。ですから陛下にはこの様な貴重な体験をさせて頂いた事に対し感謝してこそすれ、恨む等到底ありえません。どうかルガートの為にも一日もお早くご正妃を娶られそして幸せになって下さいませ。此度私はそれだけをお伝えしたかったのです。仮初めとはいえ一度は夫婦となった身ですので……」
エヴァは晴れやかな笑顔のままラファエルに告げた。
彼女の中では十年もずっと騙されていた事よりも、騙す事によって護られていたと言う事実が単純に嬉しかったのである。
それにもうお金をせっせと稼ぎ見知らぬ第三国に脱出しなくとも愛する家族の許へ、そしてまだ見ぬ今年10歳になる弟の第一王子にも会えるのだ。
一度は仕方がないと自身に言い聞かせ諦めた夢。
諦めていた夢だったからこそ叶うと知ればそれはどても嬉しいもの。
また国内の有力貴族家へ嫁ぐ事にはなるとは言えあの優しい両親の事だ。
きっとエヴァの夢――――恋をしたい。
エヴァが恋をする可能性のある子息を見つけてくれるだろう。
現状未だ恋がどの様なものかを知らないエヴァは、ここに至っても恋をする相手はまるでクリスマスのプレゼントの様に両親が見つけてくれると思い込んでいたのである。
そう言う意味を含め帰国が叶わず第三国で真実の恋を見つけると決意した時は、夜な夜な恋を見繕ってくれるであろう両親を頼る事は出来ないと、指で数え切れない夜を涙で枕を濡らした事か……。
しかし今その憂いも完全にエヴァの中より消え去ったのである。
「陛下それでは夜分遅く申し訳ありませんでしたわ。それにマックスも色々とありがとう」
「い、いやそれよりもフィオちょっと……」
「あぁアナベル、早々に帰国の準備をお願いね。これで漸く私も恋が出来――――っ!?」
慌てるマックスを尻目にこれからの明るい人生へ希望に胸を膨らませるエヴァの手を、ラファエルは無言で引き寄せる。
そして当然の様に体勢を崩したエヴァはラファエルの胸の中へと倒れ込む。
その状況を見て瞬時に殺気を放ったのはアナベル!!
「エヴァさ!?」
「アナベル嬢少し落ち着こうね」
マックスは出来るだけアナベルとの間を取りつつ且つ彼女を出来るだけ穏便に宥めようと試みる。
そうマックスは絶対にアナベルの間合いには入らない。
何故ならマックスは自身の命を護りたい!!
マックスは身を以って知り過ぎていた。
過日、アナベルによって受けた制裁を……。
姫路将軍と言う渾名は伊達ではない事を……である。
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