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終章
4 決意
しおりを挟むエヴァは天然だが愚か者ではない。
今回の一件により明るみとなった真実で感じてしまった疎外感。
最初こそは感情のままに怒りを抱いていた。
だがそれと同時に寂しさや悲しさ、やはり自分は力のない、護られるだけの子供でしかなかったのだと言う現実。
心の奥ではエヴァも理解していたのだ。
十年前いや、彼女が物心のつくかつかない頃より絶えず彼女自身とその命の危機に晒され続けてきた事。
また経緯はどうであれこのルガードへの輿入れとその際アナベルだけは常にエヴァと苦楽を共にしてくれたのである。
恐らくラファエル達もそうなのであろう……と。
エヴァの宛がわれた場所はルガート王宮の中でも秘匿されし離宮。
だからこそ正面より堂々と王が入る訳にはいかなかった。
日中は執務で忙殺されているのにも拘らず、毎夜遅くエヴァが眠ったのを確認してからラファエルは彼なりにエヴァを心配し、アナベルよりの報告を受けていたというし、おまけに密かに護衛も付けてくれていたのである。
マックスにしても然り。
あの出会いはセッティングされたもの?だとしてもだ。
この三年もの間何くれとなく働く楽しさや人と係る楽しさを教えてくれたのである。
お給金も一般の者と比べればかなり破格な対応であったのも今ならば素直に頷ける。
譬えそれが診療所兼自宅が汚部屋だったとしてもだ!!
こうして時間が経過すればする程に冷静となり自分はこんなにも大切に護られ、好遇を受けている事に感謝してもしきれないと思い至る。
それに答えはもう出ているのだ。
何時までも幼子の様に意地を張るべきでない事も十分過ぎる程エヴァは理解していた。
ただ余りに時間が経ち過ぎた故に素直になれない……だけ。
とは言え何時までもこのままでいい筈がない事も……。
そうね。
ここはちゃんと謝らなければいけないのよエヴァンジェリン。
えぇ最初はアナベルに謝ってそれから……。
色々な意味でこれまでに迷惑を掛けたという自覚はエヴァの中ではあるのだが、しかし中々と思い切って行動に移す事が出来ないでいた。
自身の行動が子供過ぎた事をいざ自覚してしまうと何やら気恥ずかしくなり、ついつい声を掛けられないでいる状況。
今ここで穴が掘れるものならばきっとエヴァは地中深く掘って掘って掘りまくり、その身をしっかりと隠してしまうだろう。
時間だけがただ無駄に過ぎ去り早ひと月。
何時までもこのままではいけないと気持ちばかりが焦ってしまう。
この状況を幅する為にも何かきっかけ、そうきっかけさえあればきっと素直になれるとエヴァは考えたのが……。
つまり今夜――――。
何時もの様にエヴァが眠りについた頃合いを見図ってアナベルはそっと彼女の部屋へと入ってくるだろう。
エヴァを心配し様子を見に来る今宵、エヴァは今度こそ素直な気持ちではアナベルに謝罪しようと決意する。
何時もエヴァが目覚めるのは早朝五時頃。
だからアナベルがこの部屋を訪れるのはそれよりも早い筈。
エヴァはそれを見越し常よりも早く休む事にした。
気持ち的にはほんの少し仮眠をとる心算だったのだが……。
アナベルは許してくれるのかしら?
こんな我儘な私を受け入れてくれる?
あぁでも最初になんて声を掛ければいいの。
抑々アナベルは怒っていないかし……ら?
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