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第四章 現在
25 始まりは終わる為にそれとも終わりは始まりの為にあるもの? Sideラファエル
しおりを挟む「さぁ手加減はいらない。好きに料理するといいよ。そう、だね、ラファエルの息の根を止めた者にはご褒美として一つ願いを叶えてあげよう」
あぁ奴は、アーロンはそんな俺の性格を良くも悪くも知っている。
だからこそ愉悦を含んだ狂決めいたその顔で俺達、いいや狙いは俺だ!!
アーロンの闇魔法の召喚によって呼び寄せられた影達が待っていましたとばかりに俺へ向かって一斉に殺意を露露わにして飛びかかってきた!?
奴の影達が放つのは純粋な殺意。
抑々彼らに人間の感情なんてモノは存在しない。
奴らは幼い頃から死と隣り合わせで受けさせられた拷問と等しい訓練と言う名の下で叩き込まれたのだ。
感情をを持てばその刹那自身の死が訪れる――――と。
俺達は臨戦態勢を取り、素早く自身の剣へ魔法を纏わせ襲ってくる影達の攻撃に立ち向かう。
「陛下っ、十分ご注意して下さい。まだまだ貴方にはしっかり働いて貰わなければいけないのですからっ」
「わかっている。お前こそこんな所でむざむざやられるなよチャーリーっ!!」
「ご冗談を……っと。私の命はそんなに安くはありませんよ!!」
「あぁそう、だな!!」
お互いの背中を預けながら俺とチャーリーは襲ってくる影達の攻撃を交わしつつ、一人ずつ確実に息の根を止めていく。
近くでは第一騎士団団長のケネス・ブライアントや他の騎士達も俺の意を組んでアーロンへ直接攻撃をせず、周りにいる影達の掃討をしてくれている。
そして俺が影の一人を仕留めた時だった。
マックスが敵の攻撃をひらりと躱しながらこちらへ向かってきた。
「エルっ、フィオがっ、王妃陛下が!?」
「なっ!? エヴァンジェリン!!」
攻撃を躱しつつ垣間見えたのは、エヴァの白い項を蛇の様にねっとりとした長い舌をねろりと這わせるアーロンの姿。
その次の瞬間舐めあげられた彼女は軽くピクピクと身体を小刻みに震えさせると、アーロンの腕の中でくたりと意識を失ってしまったのだ!?
あぁこの時俺の身体の中にどす黒いモノがふつふつと湧きあがってきた。
恐らく今までに抱いた事のない怒りを孕んだもの。
今直ぐアーロンをこの手で完膚なきまでに殺してしまいたいっ!!
これまでは単なる敵として我が国とエヴァンジェリンの安全の為だけだったのだが、今、そうこの時を以ってアーロンを殺すのは俺自身の望みとなったのだ!!
惚れた女を奴の腕の中に抱かれているだけでも許し難いのにっ、まだ俺自身何も、彼女にほんの少しでさえ触れてはいないのに、あの滑らかな肌に舌を這わせる行為は何があろうとも絶対に許せない!!
「エル、落ち着いて下さい。色々と本音が駄々漏れですよ」
「あれを見て落ち着けと言うのかっっ!!」
「。代の子供ではないのです、アーロン殿がした行為は貴方への見せつけもですが、本当の目的は私達の、王妃様へ施した術の解呪です」
「では――――!?」
「非情にヤバいですよ。次に彼女が目覚めた時最初に彼女の瞳に映りし者を、彼女の本当の意思とは関係なく盲目的に恋をするでしょう。男女関係なくね。きっとこの事実をアナベルが知れば誰よりも先に王妃様を奪還し、王妃様の眠りを覚まし我らを遠ざけ二人きりになるのでしょうね」
「お前……こんな時に言うにしては冗談が過ぎるぞ」
「はぁそうですね。冗談で済めばいいのですが――――っと」
少しの慰めにもならない話をしながらも飛び掛かってくる影達の執拗な剣戟は続いていた。
でもねエル、アナベル嬢の行動はきっと冗談ではないと思うからこそ、あの時アナベル上には多少悪いと思いつつも呪印の秘密を内緒にしていたのですよ。
何と言ってもアナベル嬢はフィオにとことん心酔していますからねぇ。
貴方の真実の恋敵はアーロン殿でなく絶対にアナベル嬢だと僕は思っているのですからね……とマックスは心の中で独り言ちていた。
「兎に角残る影を倒し、アーロン殿よりフィオを救い出し、直ぐに彼女の瞳に布を当てましょう。それに何が何でも今度こそ完全に呪印を消さなければいけませんからっ」
「わかった!!」
残る影は六人――――。
これ以上湧いて来なければ……だがな。
そして何としてもこの腕にエヴァンジェリンを取り戻す!!
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