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第四章 現在
24 始まりは終わる為にそれとも終わりは始まりの為にあるもの? Sideラファエル
しおりを挟むその穢れた手でエヴァンジェリンに触るな!!
アーロン、お前等にいいや誰一人として彼女に触れる事を許しはしない!!
エヴァンジェリンの艶やかな赤毛交じりの金色の髪も、好奇心いっぱいの大きなエメラルドグリーンの瞳も、甘やかで瑞々しい桜桃の様な美味しそうな唇に白磁の様な白く抜ける滑らかな肌とその肢体、あぁそれ以上にあの時にはなかったであろうくるくると変わる喜怒哀楽のはっきりした表情を誰にも譲る気はしない!!
一方エヴァンジェリン自身も俺の口より『我が妃』と聞き俺の正体に気が付いたのだろう。
まぁ気付かない訳がない。
また彼女の腕を掴んでいるアーロンも胸糞悪くなるくらいの砂糖塗れの声で彼女の事を『エヴァンジェリン』と呼んでいるのだからな。
色んな意味で今彼女の心の中は盛大にパニックを起こしているのだろう。
俺に関しては少なくともこの二年もの間一度として彼女に正体を打ち明ける事もなく、患者のエルさんとして彼女に接していたのだ。
誇り高い彼女にしてみればと言うか、あぁ何とも形容し難いくらい悔しさと怒りを滲ませた表情をしている。
怒りに満ちたその美しいエメラルドグリーンの瞳が涙を滲ませより一層煌めいている姿は、美しいという言葉以上思い浮かばない。
しかし今は彼女が抱えている諸々の感情はまるっと無視をさせて貰おう。
アーロンを片づけた後に幾らでも愛する君の抗議は甘んじて受け入れる。
だが離縁はしない。
同情により始まった婚姻だが、俺は君にどうしようもなく惹かれてしまったのだ。
一回り以上年の離れた君に対しあの時は抱きもしなかったこの想い……。
俺自身再び恋をするとは思わなかったのだが、俺はつくづく色恋沙汰でアーロンと因縁があるらしい。
しかし今度は、今度こそは奴から君を護り抜くっっ!!
マリアーナの様にもう悲しい最期を迎えさせはしない!!
俺は馬より降りると鞘から剣を抜く。
一刻も早くアーロンよりエヴァンジェリンを奪い戻したかったがその刹那――――⁉
奴は俺へ見せつける様に彼女を抱き寄せ腕の中へと囲い込んだのだ。
一連の行動に対し実に不機嫌極まりないくらい気持ちでその様子を見ているしかなかった。
エヴァンジェリンが奴に抵抗出来る等思ってはいない。
彼女は普通のか弱い乙女だからな。
不可抗力なものであると理解をしている。
あぁ何が腹立たしいのかと言えばだ。
奴の腕の中にいるエヴァを一刻も早く助ける事が出来ない自分自身と、その様子を実に愉し気に見ているアーロンの存在だ!!
俺が間合いを詰め、多少強引にでも彼女を奪おうとすればきっと奴の事だ。
得意の闇魔法を行使し抵抗するのは勿論、その際の奴は一切周囲へ配慮なんてものはしない。
それによって傷つく者、死する者がいたとすればそれ自体奴の狂気じみた快楽の糧となってしまう。
まして傷つくのが奴の執着してやまないエヴァならば尚の事――――奴にとって何よりの快楽となるだろう。
それを知っているからこそ今は動けない。
俺は奴とは違い愛する者が傷つく姿等見たくはないのだからな!!
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