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第四章 現在
23 始まりは終わる為にそれとも終わりは始まりの為にあるもの? Sideラファエル
しおりを挟む午前の政務が終わりこれから平服に着替えエヴァンジェリンの許へ行こうとしていた矢先だった。
その知らせを聞いたのは――――。
『陛下、シャロンの残党を王都内で発見致しました。またルートレッジ侯爵も同行しております』
『陛下っ、王妃様がシャロンの残党と接触します!!』
ほぼ同時に二つの伝達魔法が入ってきた。
幾つもの伝達が入るのは常の事。
だが今回のものは内容が内容だけに驚愕を禁じ得なかった。
「チャーリー聞いていたな。第一騎士団を王都へっ、エヴァンジェリンの許へ直ぐに向かわせろ!! 第二騎士団はルートレッジ侯爵領へ向かいシャロンに関する捜索を行え!! 俺はこのままエヴァンジェリンの許へ行く!!」
「陛下秘密が色々と露呈する事になっても宜しいのでしょうか? 王妃様は未だ何もご存じない筈……」
「愚問だな。秘密とは何れにしろ時が来れば明らかとなるものだ。それよりも今はアーロンにエヴァンジェリンを奪われるくらいならば秘密等幾らでも明らかにしてやるっ!! 俺はもう二度と大切なモノを失いはしない」
俺達は、いや俺はエヴァンジェリンの元へ向かうと共に伝達魔法でマックスへエヴァンジェリンの危機を伝え、そして彼女を護る様に命じた。
マックスからも今彼女の元へ向かっていると返事がきた。
チャーリーは俺が指示している間に騎士団への指示は済ませていた。
相変わらず根回しの早い奴だ。
昔から変わらない。
チャーリーといいマックスも良くも悪くも俺を理解してくれている。
俺がここまで早く国内を安定させる事が出来たのは多くの臣下の功績は勿論の事だが、幼馴染でもある彼らの力があればこそ……だ。
そうして俺達は影が知らせてきた場所へ、エヴァンジェリンの許へと馬で駆けて行く。
馬上で身体強化や防御呪文を施しながら……。
到着早々きっと戦闘状態になるのは想像に難くないからな。
アーロンと言う男は俺の妃であるエヴァンジェリンへ過剰なまでに執着をしている。
あいつに比べればストーカーなんてモノはまだまだ可愛いのかもしれん。
何しろエヴァンジェリンが誕生して八年もの間、アーロンは苛烈な、いや異常としか言えない程のストーキング行為を行っていた。
そうアーロンの精神は根底から病んでいる。
昔からそれは変わらない。
戦場で幾度相まみえようともそれは変わらなかった。
己の命令を少しでも遂行出来なかったであろう自国の兵士を敵国の、俺達の目の前であいつはその兵士を愉しそうに悦に入りながら嬲り殺していた。
その兵士が事切れる刹那、俺達は背筋に悪寒が走ったのを今も覚えている。
あいつは、アーロンは危険な男だ!!
アーロンは狂気の中で鮮やかに狂い咲く血の様に赤黒い薔薇の様な魅力を秘めた男。
あの男の前に連れて来られた……中には愚かにもあいつの持つ危険極まりのない妖しげな魅力に吸い寄せられた者も多くいる、がな。
己の持つ猛毒を染み込ませた棘で相手を刺し、毒に犯されて死ぬかその棘に刺され血の一滴まで身体より出し切り恍惚の中で奴に命を捧げるかの何れかだ。
それがアーロン・レジナルド・シャクルトンという男の愛し方なのだっ!!
そいつが今、あの疑う事を知らない無垢で美しくも心優しいエヴァンジェリンの傍近くにいる!!
狂気を孕んだ猛毒の棘が、エヴァンジェリンを今にも突き刺そうと両翼を広げ構えている。
エヴァンジェリンだけはっ。
エヴァだけはっ、あのあどけなくも少しはにかんだ柔らかい笑顔を見せてくれる彼女だけは何としても護り抜く!!
二年と言う時間を掛けて漸く彼女の素の笑顔を垣間見る事が出来たのだ。
後少し、もう間もなくすれば彼女の許へと駆けつけられるっ。
俺は逸る気持ちを抑えつつ更に第三騎士団へ近隣住民の避難指示を出す。
アーロンは闇魔法の遣い手だ。
目の前に愛おしい存在が手に入るかもしれないと知れば奴の事。
周りの被害も考えず……いや、奴の魔法の影響で苦しむ国民を見て大いに愉悦するだろう。
アーロンにしてみれば民達の苦しみ死にゆく姿は、あくまでもエヴァンジェリンを手に入れる為の余興に過ぎない。
だが俺はお前ではない。
幾ら姿形は似ていようとも俺はお前とは違う。
お前の下らない快楽の為にエヴァンジェリンを含め我が民一人とてお前の好きにはさせない!!
そうして漸く俺の視界に彼女の姿を捉えた時だった。
アーロンは舐め回す様に執拗な視線でエヴァンジェリンを捉えながら彼女の左手首を掴んでいた!?
「――――そこまでだアーロン、我が妃の手を離して貰おうかっ!!」
アーロンと戦うに関し常に冷静を保たなければいけない事を十分に理解をしてはいてもその光景を見た瞬間、本能の赴くまま声高に叫んでいた。
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