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第四章 現在
21 始まりは終わる為にそれとも終わりは始まりの為にあるもの? Sideエヴァ
しおりを挟む私は突然齎された真実に対し悔しさに口惜しさと心の奥から込み上げてくる憤りで目頭が熱くなり、それに伴い涙が溢れ出そうになってしまう。
可能ならば大声で心赴くままに陛下やマックスを罵倒したかった――――けれどもやはりそこは私も私の立場というものを自然と理解してしまう。
王族として生まれた以上感情に身を任せ、好き勝手に行動してはいけない。
王族だからこそ延々と受け継がれた矜持を大切にし、自身の感情を制御を心掛け相手と接しなければならない。
でもっ、だけどっ、わかっている!!
わかっている。
だけどこの二年もの間、不覚にも私自身楽しかったの。
今日もこれから三人過ごすのを楽しみにして、いたの。
何をという訳でもない。
陛下とマックスの三人で仕事の後の他愛のないお話とお食事。
本当に楽しかっただけにこんなのって!!
ならばせめて二年前に再会したあの時、あの瞬間陛下が名乗って下さったならば私は今こんなにも辛くはなかったと……辛い?
どうして?
何故?
私は陛下に騙されていた事が辛い、の?
あぁもう何がなんだかわからない。
私は陛下に対して何も感情なんてない筈なのに……。
だけどエルさんは?
エルさんに対してはどうなの?
私ってば陛下よりもエルさんに騙されていた事が辛かったの?
ぽとん――――。
頬に一筋の涙が伝わり落ちていく。
言葉として紡ぐ事の出来ない訳のわからない想いが……。
知りたくない事実が一気に私の心へ押し寄せ、行き場のなくなった想いが形となり、涙は後から後から溢れてくる。
あっ、なっ、嫌だわ。
どうして泣いてしまうの???
理由がわからないっ!!
ふ、うっ、お母様もお父様も、アナベルだってこの様な時にどう対処すればいいのかなんて誰も教えてくれなかったわ。
でもっ、もうこの場所には居たくないっ!!
あ、アナベルにっ、アナベルに訊かなきゃ。
私はこれからどうすればいい?
きっと今の私は自分でも情けないくらい周囲の誰の目にも憚る事なく醜態を晒しているのでしょう。
王族らしくもっと冷静にならなければいけないのに、でも一度剥がれてしまった仮面は中々どうして直ぐには着けられない。
この十年、少なくとも三年前まではアナベルと二人きりだった事もあり王族という仮面を着ける必要もなかったもの。
マックスの診療所でもそうだったわ。
診療所助手兼家政婦のフィオに抑々仮面なんて着ける必要はなかったもの。
なのにどうして今になって!!
そう私はこの瞬間まで忘れていたの。
もう一人の、エルさん2号さんという陛下の従兄弟君に捕まってしまったという事を……。
「ふふ、可愛いね僕の愛しいエヴァンジェリン。君の泣き顔は本当に他の女達とは比べられないくらいにゾクゾクするね。本当に何とも形容し難いこの世でたった一つの至宝としか思えない」
「えっ!?」
私の手首を握る手へ一層力を込めて痛いくらいに握りしめながら私を自身の胸の中へと囲い込もうとしてくるの。
勿論私も抵抗したわ。
けれど男女の力は歴然で、あっという間に私はエルさん2号さんの腕の中の人となってしまった。
そして彼は何を思ってなのか行き成り私の項に熱くてヌルっとしたモノをゆっくりと這わしてきた!?
触れられた瞬間――――嫌悪でしかない。
背筋にゾクゾクとしたものが走り身体中が総毛立つ様なとても嫌な感じ。
物凄く嫌なのに、直ぐにもこの腕の中より逃れたいのに、私は囚われてしまいなす術がなかったの。
そして今し方の熱くてヌルっとしたものが彼の舌だとわかった刹那、びりりっと身体中に電気が走った感覚と同時に私は意識を遙か彼方へと手放してしまっていた。
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