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第四章  現在

20  始まりは終わる為にそれとも終わりは始まりの為にあるもの?  Sideエヴァ

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 今は一体何がどうなっているの⁉


 突然目の前に現れたエルさん?
 いえ、確かにエルさんとお顔はそっくりでも何かが違う。
 そうね、同じお顔でもそれぞれに纏っている雰囲気が全く違うのだと、私の中で何かが強く叫んでいる。

 とは言え何が違うのかしら。
 顔や身体つきに髪の色もだけれど、やや薄い唇もまるで鏡を見ているのかと思えるくらい同じ顔にその姿。

 いいえあったわ。
 たった一つだけ決定的に違うもの。

 の色。

 私の知るの瞳は落ち着いた深い湖の様な蒼い色。
 それに比べ2さんの瞳の色は同じ青でも違うわ。
 彼の瞳の色は明るい天色あまいろ

 でも何時、だったのかしら。
 私はこの2さんの瞳を知って、いるのかもしれない。

 そう、でも何故かそれを思い出してはいけない気がするのは何故?

 だけど、だけどっ、明るい天色の双眸が今私の身体へ執拗に絡みついて、くる。
 絡みつく視線はその色と相反し何とも陰湿で、そうまるで大蛇の様に視線が合えば身体が恐怖の余り竦んで逃げられない気がするのはどうして!?

 それに2さんは私をではなくと!!

 この人は間違いなく真実ほんとうの私を知っている人。
 だけど私はこの人の事を知ら、ない?

 いいえそれだけではないわ。
 一番吃驚したのはその次に現れた2さんへ向かって放った言葉。

 ――――って⁉

 わ、我が妃って、我が妃ってそれは間違いなく私の事、よね?
 確かに紙切れ上だけれど私は既婚者だわ。
 でも、だとすればは、彼の正体はラファエル陛下だという事なの!?

 あぁでもそれはさすがにないでしょ。
 ラファエル陛下と言えば私がこの国へ輿入れした時にたった一度拝顔しただけなのよ。
 その後はアナベルと共にあの離宮へ私達を捨て置いた張本人。

 この十年もの間夫婦として過ごした事もなければ、表舞台にも一度たりとも共に行動した事はないのですもの。


 そう十年もの間、私達はずっとあの離宮で辛酸を舐めて……実質はそうでもないのだけれどもね。
 とは言え押さなくても一国の王女である私を陛下は娶られたの。
 それなのにただの一度も王妃として遇する訳でもなく、国内の貴族はおろか王宮へ仕える侍女や侍従に果ては国民に至るまで誰も私を王妃――――いいえ、人間としての存在すらも認められなかった。
 
 ずっといない者として、忘れられた存在として生きてきたの!!
 だからっ、私達は十年と言う時間を償いの意味として我慢をしてきたわ。

 そうよ、漸く待ちに待った十年なのっ!!

 もう二度と故国ライアーンへ帰る事が出来ないのは悲しいけれども、それでも第三国へ亡命し今度こそ人生をやり直そうっていう今になって?

 いえ違うわ。
 恐らくニ年前より陛下は、いえマックスもきっとグルなのね。
 マックスは多分、きっと陛下の臣下に違いないわっ。
 ふ、ふふ、マックスに然り。
 陛下もこの二年もの間私が何も知らないと思いさぞかし面白かったでしょう。

 本当になんて滑稽なのかしら。
 私は何も知らず紙切れだけの関係の夫を甲斐甲斐しく看護し、食事を作り共に笑って話していたの?
 そして今日も今日とて彼の為に昨日より煮込み料理を呑気に作っていたという訳!?
 貴女馬鹿よ、エヴァンジェリン、貴女は本当に大馬鹿だわっ!!
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