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第四章 現在
19 始まりは終わる為にそれとも終わりは始まりの為にあるもの? Sideジェフリー
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突然の再会だった。
確かに可憐で華奢なその姿に庇護欲が駆り立てられはしたけれども決してそれだけではない。
初めて出逢ったあの瞬間私は彼女……フィオへ恋情を抱いてしまった。
ほんのひと時だけの、逢瀬とも言えない僅かな時間。
その僅かな時間でも恋に堕ちるのには十分だった。
平民の娘らしい身なりではあったのだが恐らくフィオ嬢だけでなく、直後私達の間へ割って入りあからさまなる私へ殺意の籠った眼差しを向けた女も――――貴族。
粗末な身なりから溢れ出る貴族令嬢、多分それも高位の貴族家の令嬢だろうと思われる品の良さ。
あの様な騒動であったのにも拘らずフィオ嬢の優雅で細部に至るまでの細やかな所作。
下位の貴族令嬢の教育では身に付けられないもの。
上位の伯爵家に候、公爵家若しくは王族であると名乗られても素直に頷ける。
ただ何故その様な高位の令嬢があの様な場で襲われ、いや平民の姿に身をやつしていたのだろうか。
心の中で幾つもの疑問を抱きはしたのだが結局フィオ嬢に何も問い掛ける事は出来なかった。
常の私ならば即座に尋問していただろうし、自ら進んで他人を送る事はしなかった筈。
貴族だろうが平民であろうとも拘らず女と言う生き物と仕事以外での接触は極力避けたい。
とは言え私自身は同性愛者ではない。
いや、女だけでなく抑々人間と言う生き物自体が苦手なのだ。
だから生涯異性へ恋情を抱く事もなく政略で婚姻を結び、我がサザートン家の繁栄の為に義務で子を生せば後は母親となり妻でもある契約相手、あぁ面倒だから乳母に子を任せてもいいな。
ふ、昔の私と同じ……だ。
きっとその子も愛を知らず、親の敷いたレールに沿って、異を唱える事無く黙々と命じられるままに生きていくのだろうな。
それがこの私ジェフリー・トーマス・サザートンと言う男の人生でもあった。
あぁ正確にはフィオ嬢を知る前の私の人生。
だがあの瞬間、今まで灰色一色だった私の人生と言う一枚の絵がだ。
フィオ嬢が現れた瞬間、見る間に多彩で豊かな彩の洪水が、その一つ一つに輝きを放ちながら鮮やかに彩られていったのだ。
そうフィオ嬢こそ何物よりも代え難い存在!!
あぁもし真実に、いや勿論そこは今直ぐでなくともいい。
月並みだがゆっくりでいいのだ。
これからゆっくりと、普通の人間達の様に時間を掛けて私はフィオ嬢と交流を深め、そうして何時か私の願いが叶うならば、彼女と生涯を共に歩いていければどの様に素晴らしいだろう。
我がサザートン家の悲願でもあるアーロン様をシャロンの王へと無事即位して頂く為により一層努力もしよう。
一応表向きはルガートの重臣。
自国を騙す行為に多少心は痛むけれどもこれも全ては大義の為。
ラファエル王には悪いがこれもアーロン様の御為に、陛下には近い将来新シャロン王国の発展の礎として人柱になって頂く心算だ。
これは非常に重要且つ厳しい任務でもある。
だがこれもサザートン家に生まれた物の宿命であり呪い。
だがそれでも屋敷に帰れば何時の日か我妻へと迎えるフィオ嬢と、生まれてくるだろう私達の子供達と普通の幸せと言うものを送ってみたい。
何も世界や国を欲している訳ではない。
一人の男として、最愛の女性とごく普通に愛し合いたい。
ささやかだが私にとって何よりも大切なるものと思っていたのに……だ。
「ねぇ何を隠しているのジェフリー?」
確かに可憐で華奢なその姿に庇護欲が駆り立てられはしたけれども決してそれだけではない。
初めて出逢ったあの瞬間私は彼女……フィオへ恋情を抱いてしまった。
ほんのひと時だけの、逢瀬とも言えない僅かな時間。
その僅かな時間でも恋に堕ちるのには十分だった。
平民の娘らしい身なりではあったのだが恐らくフィオ嬢だけでなく、直後私達の間へ割って入りあからさまなる私へ殺意の籠った眼差しを向けた女も――――貴族。
粗末な身なりから溢れ出る貴族令嬢、多分それも高位の貴族家の令嬢だろうと思われる品の良さ。
あの様な騒動であったのにも拘らずフィオ嬢の優雅で細部に至るまでの細やかな所作。
下位の貴族令嬢の教育では身に付けられないもの。
上位の伯爵家に候、公爵家若しくは王族であると名乗られても素直に頷ける。
ただ何故その様な高位の令嬢があの様な場で襲われ、いや平民の姿に身をやつしていたのだろうか。
心の中で幾つもの疑問を抱きはしたのだが結局フィオ嬢に何も問い掛ける事は出来なかった。
常の私ならば即座に尋問していただろうし、自ら進んで他人を送る事はしなかった筈。
貴族だろうが平民であろうとも拘らず女と言う生き物と仕事以外での接触は極力避けたい。
とは言え私自身は同性愛者ではない。
いや、女だけでなく抑々人間と言う生き物自体が苦手なのだ。
だから生涯異性へ恋情を抱く事もなく政略で婚姻を結び、我がサザートン家の繁栄の為に義務で子を生せば後は母親となり妻でもある契約相手、あぁ面倒だから乳母に子を任せてもいいな。
ふ、昔の私と同じ……だ。
きっとその子も愛を知らず、親の敷いたレールに沿って、異を唱える事無く黙々と命じられるままに生きていくのだろうな。
それがこの私ジェフリー・トーマス・サザートンと言う男の人生でもあった。
あぁ正確にはフィオ嬢を知る前の私の人生。
だがあの瞬間、今まで灰色一色だった私の人生と言う一枚の絵がだ。
フィオ嬢が現れた瞬間、見る間に多彩で豊かな彩の洪水が、その一つ一つに輝きを放ちながら鮮やかに彩られていったのだ。
そうフィオ嬢こそ何物よりも代え難い存在!!
あぁもし真実に、いや勿論そこは今直ぐでなくともいい。
月並みだがゆっくりでいいのだ。
これからゆっくりと、普通の人間達の様に時間を掛けて私はフィオ嬢と交流を深め、そうして何時か私の願いが叶うならば、彼女と生涯を共に歩いていければどの様に素晴らしいだろう。
我がサザートン家の悲願でもあるアーロン様をシャロンの王へと無事即位して頂く為により一層努力もしよう。
一応表向きはルガートの重臣。
自国を騙す行為に多少心は痛むけれどもこれも全ては大義の為。
ラファエル王には悪いがこれもアーロン様の御為に、陛下には近い将来新シャロン王国の発展の礎として人柱になって頂く心算だ。
これは非常に重要且つ厳しい任務でもある。
だがこれもサザートン家に生まれた物の宿命であり呪い。
だがそれでも屋敷に帰れば何時の日か我妻へと迎えるフィオ嬢と、生まれてくるだろう私達の子供達と普通の幸せと言うものを送ってみたい。
何も世界や国を欲している訳ではない。
一人の男として、最愛の女性とごく普通に愛し合いたい。
ささやかだが私にとって何よりも大切なるものと思っていたのに……だ。
「ねぇ何を隠しているのジェフリー?」
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