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第四章 現在
18 始まりは終わる為にそれとも終わりは始まりの為にあるもの? Sideエヴァ
しおりを挟む「――――っ!?」
ごくり……。
私は今ジェフ様の腕の中ではなく彼の大きな背中へと、まるで何者かより隠されているみたい。
瞬時に移動をさせられた事も驚きだけれど、でもそれよりもジェフ様の全身から醸し出されるこの異様なまでの緊張感がただ事ではない事態が起きているのだと強制的に理解させられてしまう。
一体何事が起こっているのかしら。
わからない。
わからないけれど多分この状況は、今ジェフ様へ声を掛けた者によるものである事は何となく察知したわ。
テノーレ・レッジェーロの様なやや高めだけれども何処か中世的な印象の声。
ただその声音に似つかわしくないくらいの淫猥さを更に粘着性を纏うもの。
発せられる声を聞くだけで可能な限りお知り合いにはな……⁉
ぎゅ!!
瞬きする程の時間もなかったと思う。
ほんの一瞬だけジェフ様は後ろを向いたままの状態で私の手をそっと握りしめる。
まるでもう大丈夫だと安堵させる様に。
でも握りしめられる私はと言えば、何故か胸はドキドキとこれまで以上に忙しなく打ち鳴らすだけではない。
頬は見る間に熱を持ち……って頬だけではない。
握られた手から全身へと火傷をしそうなくらいに熱を持ち始めるのだもの。
そして心は不思議なくらい羽根が生えた様に軽くなろうとした時だった。
「ここより早く立ち去れ!!」
「――――っ!?」
一瞥さえもせずジェフ様は温度を全く感じさせない冷たい声音で、そう今まで聞いた事のない一切感情の籠らない口調で私へ告げた。
私は一体ジェフ様に何をした……の?
わからない。
何がどうなっているの?
私からは何も見えない。
何故ならジェフ様の大きな背中で全てを隠されて?
いえ、きっとこれは私に関わらせたくないのでしょうね。
理由なんてわからない。
ただ彼の背中と私を拒絶する声音でただ事ではないと悟ってしまっただけ。
それが正しい事かどうかも今の私に判別をするだけの情報はない。
兎に角今ここに私は一人。
マックスの傍を離れているだけでなくアナベルもいない。
ここはジェフ様の忠告通り回れ右をして一先ず診療所へと直ぐにでも戻ろう。
戦う力を持たない私がいては返ってジェフ様の足枷となってしまうわ。
本音を言えばジェフ様と離れ難いと、心の奥にチクリと痛みを感じてしまった。
この痛みが果たして何を意味するのかを今は考えるべきではない。
また今彼と別れれば今度いつ会えるかもわからない。
それでも……と私は揺れる心を抑え、促されるままにその場を離れようとした刹那⁉
「ねぇ何を隠しているのジェフリー?」
「――――っっ!?」
先程聞いたねっとりと、そしてこの声は何処か聞き覚えのあるもの。
まるで見えない蛇の如く私の心へゆっくりと、確実に逃すまいと絡みつく淫猥さを纏う声音がジェフ様を誰何したわ。
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