83 / 122
第四章 現在
閑話 まったく油断も隙もない!! Sideアナベル 後編
しおりを挟む「静粛に」
ビリビリと響くような声で国王陛下が言葉を発すると、周りの官僚はピタッと静かになる。
「私はSランク冒険者の枠組み自体を変えようと思っている。今まではSランク冒険者は各々の街や周辺の地域を守る一つの役職であった。しかし国防を一個人に任せるのは国の怠慢であると皆思っていたことであろう」
陛下はこの玉座の間に集まった人たちをゆっくりと見回していく。
「Sランク冒険者が国防を担うというのは今このときをもってやめにする。これからはSランク冒険者の称号は王国が実力を認めた者に与えることとする。是に則り、コルネとアドレアの二人にはSランク冒険者の称号を与える」
なるほどSランク冒険者の定義が「実力を認めた者」になるのならば、俺やアドレアがSランク冒険者になることは問題ないだろう。
「その上で、三人とは国防を担うという取り決めを改めて交わした。そして此度のテロにより、ラムハは個人での防衛体制では不十分だということが他国にも露呈した。ゆえに、ロンドの他にラムハには軍の者を常に駐在させる」
つまりこういうことだろうか──Sランク冒険者に防衛の義務はなくなるが、レオンさんとサラさんはこれまで通り自身と道場にいるお弟子さんで引き続き防衛を担う。師匠も引き続き防衛に参加するが、王国騎士団と魔法師団から派遣されてくる、と。
師匠以外に戦力が増えれば、おそらく師匠がラムハを離れるときの手続きはとても簡素なものになるだろう。今までは師匠一人でラムハを守っていたから、どこかに行く度に代わりの軍の人員を派遣してもらう必要があったが、元から駐在しているのならその必要はない。
これは師匠が自由に動けるになる──師匠が自由に旅をできるようにするという俺の目的が果たされるということだろうか。
俺がSランク冒険者になったことが直接の要因ではない気がするが、なんにせよ師匠がやりたいことができるようになるのはいいことだ。
「最後に、Sランク冒険者は国が実力を認めた者──すなわち国の宝だ。これに仇なす者は以前と同じように王国への叛逆とみなす」
そこまで陛下が続けざまに言い終わると、もうひそひそと喋る人はいなかった。それを確かめてから司会の人が口を開く。
「褒賞拝受者が退場されます」
俺たちは奇異の視線に晒されながらぞろぞろと玉座の間を後にし、こうして贈呈式は特にハプニングもなく幕を閉じたのだった。
ビリビリと響くような声で国王陛下が言葉を発すると、周りの官僚はピタッと静かになる。
「私はSランク冒険者の枠組み自体を変えようと思っている。今まではSランク冒険者は各々の街や周辺の地域を守る一つの役職であった。しかし国防を一個人に任せるのは国の怠慢であると皆思っていたことであろう」
陛下はこの玉座の間に集まった人たちをゆっくりと見回していく。
「Sランク冒険者が国防を担うというのは今このときをもってやめにする。これからはSランク冒険者の称号は王国が実力を認めた者に与えることとする。是に則り、コルネとアドレアの二人にはSランク冒険者の称号を与える」
なるほどSランク冒険者の定義が「実力を認めた者」になるのならば、俺やアドレアがSランク冒険者になることは問題ないだろう。
「その上で、三人とは国防を担うという取り決めを改めて交わした。そして此度のテロにより、ラムハは個人での防衛体制では不十分だということが他国にも露呈した。ゆえに、ロンドの他にラムハには軍の者を常に駐在させる」
つまりこういうことだろうか──Sランク冒険者に防衛の義務はなくなるが、レオンさんとサラさんはこれまで通り自身と道場にいるお弟子さんで引き続き防衛を担う。師匠も引き続き防衛に参加するが、王国騎士団と魔法師団から派遣されてくる、と。
師匠以外に戦力が増えれば、おそらく師匠がラムハを離れるときの手続きはとても簡素なものになるだろう。今までは師匠一人でラムハを守っていたから、どこかに行く度に代わりの軍の人員を派遣してもらう必要があったが、元から駐在しているのならその必要はない。
これは師匠が自由に動けるになる──師匠が自由に旅をできるようにするという俺の目的が果たされるということだろうか。
俺がSランク冒険者になったことが直接の要因ではない気がするが、なんにせよ師匠がやりたいことができるようになるのはいいことだ。
「最後に、Sランク冒険者は国が実力を認めた者──すなわち国の宝だ。これに仇なす者は以前と同じように王国への叛逆とみなす」
そこまで陛下が続けざまに言い終わると、もうひそひそと喋る人はいなかった。それを確かめてから司会の人が口を開く。
「褒賞拝受者が退場されます」
俺たちは奇異の視線に晒されながらぞろぞろと玉座の間を後にし、こうして贈呈式は特にハプニングもなく幕を閉じたのだった。
0
お気に入りに追加
250
あなたにおすすめの小説
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる